2013 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリー的アプローチによる熟練教師の「熟練性」及びその形成過程の研究
Project/Area Number |
24520590
|
Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
康 鳳麗 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (30399034)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
坂本 勝信 浜松大学, 経営情報学部, 准教授 (40387501)
|
Keywords | ライフヒストリー的アプローチ / 日本語教師 / 「熟練性」 / 授業スタイル / 日本語教師の力量形成 / 質的研究 / 半構造化インタビュー / トライアンギュレーション |
Research Abstract |
本研究では、熟練日本語教師の「熟練性」とその形成過程に注目し、日本語教師の力量形成に必要不可欠な実践経験内容を、ライフヒストリー的アプローチによって明らかにする事例研究を積み重ねてきた。 2006年から8年間にわたり、日本語教育の地域的特性や時代的な特性等を踏まえながら、サンプルの多様性を最大にする観点から事例を収集し、共通する「熟練性」の内容を抽出してきた。研究方法としては、現在の授業実践の参加観察及び実践者への半構造化インタビューに加えて、学習者のノートや感想等を収集し、信頼性を高めるためのトライアンギュレーションを意識的に追求してきた。 本年度は、①日本国内で教える日本人日本語教師2名、及び、海外で教える日本語教師4名(うち中国語母語話者3名、日本語母語話者1名)の事例データの整理および分析を行った。中国における事例研究は、新たに「コーホート」という概念を使って整理し、②中部教育学会第62回大会にて「中国における中国人日本語教師のライフヒストリー―コーホートによる実践的力量形成の相違に着目して―」をタイトルに学会報告を行った(2013年6月,富山大学)。またその成果は③「中国における中国人日本語教師のライフヒストリー研究―コーホートによる授業スタイル形成の相違に着目して―)鈴鹿医療科学大学紀要(査読有),No.20,pp.39-p48,2013)として上梓した。④一方、言語教師の授業力量は、使用する教材とのコラボレーションによって発揮される。主教材の教科書の内容構成や編集を実験的に中国語教師でもある康を中心に試作した(康、坂本、森脇『フレーズで学ぶはじめての中国語』三重大学出版会,2014)。ライフヒストリー研究の中でとくに教育経験の少ない初任期と熟練期における教材の「適切性」についてこの教科書編集経験をもとに今後探究を進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重要な事例をいくつか収集できた点。とくに台湾における日本語教育実践を参加観察し、ライフヒストリーについてのインタビューをすることができた点である。 これまで収集した事例を整理し、分析をした。その分析結果を新たに「コーホート」という概念を使って整理し、制度的歴史や社会文化的背景の中で、個々の日本語教師のライフヒストリーへの理解やそれぞれの教師の時代的な課題や「悩み」の諸相を明らかにすることができた点である。 言語教師の授業力量は、使用する教材とのコラボレーションによって発揮される。主教材の教科書の内容構成や編集を実験的に中国語教師でもある康を中心に試作した(康、坂本、森脇『フレーズで学ぶはじめての中国語』三重大学出版会,2014)。ライフヒストリー研究の中でとくに教育経験の少ない初任期と熟練期における教材の「適切性」についてこの教科書編集経験をもとに今後探究を進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度においては、継続的にデータ収集の蓄積に努めると同時に、これまでの研究で得た仮説的な結論を踏まえながら、教師の授業実践のどのような要素、要因が熟練日本語教師の授業スタイル形成の契機を与えるのか、その際、時代的背景がどのように影響しているのか、分析を行う。そして熟練日本語教師の「熟練性」及びその形成過程について、得られた結果をとりまとめ、日本語教育学会、中部教育学会、中国語教育学会及び本研究の最終報告書にて成果発表を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
台湾へのフィールドワークを予定していたが、先方の都合で実施できなかった。 今年度、台湾へのフィールドワークに使用したい。
|