2012 Fiscal Year Research-status Report
学習者間の相互援助を促す指導が協調的対話の産出と第二言語習得に及ぼす効果
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24520609
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
森山 淳子 千葉大学, 国際教育センター, 特任助教 (60625945)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文法指導 / 英語の疑問形 / 学習レディネス / LREs |
Research Abstract |
(1)英語の疑問形を指導する4回の授業における学習者対話録音(約30時間)の整理・デジタル化を行い、そのうち分析対象となりうる約20時間分のトランスクリプトの作成を完了した。 (2)研究1では疑問形習得の発達段階が「同じステージ」にあるペアのLREs(第二言語の習得に必要とされる気づきや修正発話を促進するとされている「言語使用に関するやりとり」)の産出を分析した。ディクトグロスが、学習者ペアにおけるLREsの産出促進に有効であることを示した先行研究(Swain, 1998)より、本研究でのLREsの産出は少なかったが、LREs産出は発達段階の高い学習者ペアの方が多い傾向にあった。本傾向はディクトグロスよりもインフォメーションギャップ・タスクで顕著だった。 先行研究(e.g., Swain, 1998)では、ディクトグロスにより学習者間の対話におけるLREsの産出増加は確認されたが、それが第二言語の発達につながることは実証されていなかった。本研究(研究2)の結果と、私の先行研究(Moriyama, 2007)での分析結果(指導項目であるStage 6 の疑問形の習得レディネスがあった学習者は、指導後に最高ステージへ発達レベルがアップしたこと)をあわせ考えると、授業中のペア活動における学習者間のLREs産出は大量ではなくとも、明示的に指導された文法項目を使ってコミュニケーションを行い、ペアワークにおける発話の誤りに対する気づきや修正発話を促す指導によって習得促進が可能であるということを明らかにできた。 また、コミュニカティブ・アプローチの導入以来、明示的な文法指導を避けたタスク中心の指導がさかんだが、以上の結果は、習得が難しいとされる複雑な疑問形の習得の促進には、明示的文法指導取り入れた学習が欠かせないことと、学習者の発達段階を考慮した指導の必要性を実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の理由により、本年度に予定していた研究2を実施できなかった。 (1)既に収集していた学習者の対話録音をデジタル化してトランスクライブするプロセスにおいて、通常の授業を行っている教室で録音を行ったデータの音質などが悪く、分析に耐えない部分が予測したより多いことがわかった。また、対話の中のLREsを調べたところ、予測していたよりも(Swainの1998の先行研究よりも)LREsの産出頻度が少ないことがわかり、学習者間の対話におけるLREsの産出頻度とその内容と、第二言語習得(疑問形の習得ステージのアップ)の関係について調査することを目的とした本研究をさらにすすめるには、追加データの収集が必要であることがわかった。追加データの収集にあたっては、既に収集したデータと同じ条件でデータ収集を行えるよう配慮する一方、LREsの産出が多くなるような工夫を授業に盛り込み、タスクデザインによるLREsの産出頻度と内容の比較が行えるよう、指導とデータ収集方法について検討する必要があり、そのために時間を使った。 (2)改善したタスクを試用し、LREs産出の増加に効果的であることを確認すると共に、翌年度(前期)に担当予定の英語授業でデータを追加収集する計画をたてる時間をとった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)追加データの収集(H25年度前期)・分析(H25年度後半) Swain(1998)の研究で見られたより、本研究でLREsの発話が少ない傾向が見られた原因の1つとして考えられるのは、ディクトグロスのリスニングで聞いた質問文(8-10文)をペアで再構築して書く作業をする際に、前半と後半で再構築を主として行う人を分担したタスク・デザインが考えられる。各ペアの2人の学習者に対して、できるだけ均等に多く発話機会を与えるためにこうした分担を行ったが、この配慮は逆に、学習者間の自由なやりとりを抑制した可能性がある。追加データの収集では、Swain (1998) で使用されたディクトグロスと同様の方法をとり、LREsの産出促進を行った指導データを集める。また、学習項目を用いた質問文の発話のautomatization (自動化)をねらって使用したインフォメーションギャップ・タスクでは、学習者の多くがタスクゴール(e.g., 情報・意味の伝達)の達成に夢中になり、発話における文法エラーなどへの注意の度合いが低くなりがちで、LREsの産出もまた少なかったが、このタスクについては前回のデータ収集と方法をかえずに指導を行うことにより、ディクトグロスにおけるLREsの産出頻度と内容という観点から、前回収集のデータと追加収集するデータの比較を行い、深い考察を行う。 (2)研究2を、追加データ収集と並行して行う。 (3)研究3の実施。授業で観たモデリング・ビデオで、LREsの多いモデリングを観た学習者と、LREsが少ないものを観た学習者との間に、どんな差異があるか調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度交付の直接経費の繰越分(65万円)と、次年度の直接経費の交付予定金額(60万円)を合算した125万円の使用計画は次のとおりである。 (1)人件費・謝金(20万円):クラスにおけるデータの追加収集(1人1回あたり約30分かかる個別スピーキングテストを3回実施する際の試験管への謝金)、テストと授業中の対話録音の整理を依頼する人への謝金、データ分析における研究補助者への謝金。ただし、実施するクラスの受講者見込み数は12~20人だが、実際の受講者数により、必要金額がかわる可能性がある。 (2)対話録音のトランスクリプト作成の外注費用(40万円) (3)旅費(35~50万円):既に発表申込みが受理されている、BAAL (The British Association for Applied Linguistics)の年次国際大会(9月・英国)への参加にあたり、約35万円が必要である。また、フィリピンで開催されるASIA TEFLの年次国際大会での発表申込みもしているため、受理された場合は、約15万円が必要になる。 (4)物品費(15万円):書籍代・文具代など
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Research Products
(2 results)