2012 Fiscal Year Research-status Report
有声リハーサル及び無声リハーサルから捉えるリスニング力の解明
Project/Area Number |
24520615
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
建内 高昭 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10300170)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リハーサル / 聴覚 / 音韻 / 無声 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は、リハーサルに関わる基礎的な資料収集及び分析を行ったことである。リハーサルに関しては認知心理学的な知見、さらには神経科学的な知見の両方を視野に入れて研究を進めている。第一に認知心理学的な知見から、音韻情報の保持にリハーサルが寄与することが示されている。構音抑制課題を用いた研究から、構音抑制が強いほど、記憶保持への干渉が起こり記憶の減衰が進むことが示されている。あるいは音韻の長さを調査した研究から、音節が長い語彙よりも短い音節の語彙の方が記憶に留まりやすいことが示されている。これらより、リハーサルを伴うことが音韻保持の保持に貢献することは異論の余地のない認知心理学の常識といえるだろう。次に神経科学的なアプローチに基づくリハーサル研究を概観する。神経科学的による知見は、fMRIやEEGなどの脳機能画像法の進歩のもとで、認知神経科学をはじめとした学際的な研究領域となり、そこから得られた脳地図的な知見がリハーサル研究に大きく影響を与えている。具体的には音韻認知とリハーサルのいずれの活動でも大脳皮質領域で重複が見られること、またリハーサルを体性感覚野との関わりから捉えることで包括的なリハーサルの枠組みを捉えることができることが新たに明らかになってきている。 上記に示した内容を踏まえて、認知心理学的知見においても、また神経科学的知見のいずれにおいても、リハーサルを無声及び有声に区別を用いずに単一の活動と捉えており、有声であるのか、あるいは無声であるのかを区別して行われた研究はほとんどない。そこで構音のあり方に注目し、有声リハーサルと無声リハーサルの2つを加えることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、有声リハーサルと無声リハーサルの区別を明確化するための方略を広く模索した。認知心理学的手法のうち、言語課題を用いる場合に、聴覚における注意、課題遂行の認知方略の意識的選択、随意的選択の制御などの手法、あるいは短期記憶課題による判別など、言語に固有な過程とはいえないものの、言語的な操作や過程からの影響を探ることが期待できる。 上記に示した手法を鑑みて、本研究は短期記憶課題を用いることにした。有声リハーサルの場合と無声リハーサルの場合をより明確に区別するために、言語的な操作影響の違いを探ることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
神経科学的な知見でリハーサルを含む体性感覚ー運動に関わる研究成果から、体性感覚野に対する捉え方が大きく揺れている。従来のLiberman & Mattingly (1985)による古典的な知見は、聞き手が聞く過程において潜在的な運動を通して理解を進めるという立場である。すなわち構音が随伴することにより認知過程が進むと考えられてきた。このような事実を支える神経科学研究としてWilson(2004)が挙げられる。一方でこれらの認知と運動とのかかわりを神経科学及び症例研究を踏まえたHickok(2009)らは、認知に見られる賦活と言語表出に見られる賦活との間で重複があるのは、因果関係ではなく相関であると指摘している。すなわち、体性感覚野において処理された過程により、運動が随伴していることを明らかにしている。このように神経科学的な知見から、認知過程を契機として構音への影響が起きていることは極めて重要な指摘である。 以上のように、認知を契機としてリハーサルを含む運動が促進される事実から、本研究課題であるリハーサルの生成を視野に入れ、広範にリハーサルを捉えることができると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に従い、学会参加、脳科学関連ソフト購入を購入する。とりわけ研究課題に近い最新の研究成果を収集するために脳ヒトマッピング学会への参加のための旅費として使用する。さらには最新の文献の入手を進めていく。 繰り越金が生じた状況は、研究者が体調を崩したため、研究遂行の一部が遅れたことによる。
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