2012 Fiscal Year Research-status Report
批判的コミュニケーション教育としての英語教育実践法の開発
Project/Area Number |
24520624
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
吉武 正樹 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (40372734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 真純 長崎大学, 経済学部, 准教授 (00304923)
鳥越 千絵 西南学院大学, 文学部, 准教授 (00599178)
宇田川 元一 西南学院大学, 商学部, 准教授 (70409481)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 批判的教育学 / 批判的コミュニケーション教育 / 英語教育 / ナラティヴ・アプローチ |
Research Abstract |
初年度に当たる平成24年度は、4名の研究者が各々の担当分野における文献調査と資料収集を中心に研究を進めた。 まずは、批判的教育学や批判的コミュニケーション教育についての理論的理解を深めるために関連文献を収集し、英語教育実践や異文化コミュニケーション教育実践との接点についての考察を深めた。その結果、批判の捉え方における多様性が見られた。例えば、権力の不正を暴き、問いただす特定の意味での批判と、より一般的な意味で物事を鵜呑みにせず、さまざまな角度から考える構えとしての批判とが見られた。前者は後者の特定の形式と考えることができ、本研究のテーマである英語教育における批判的教育実践という意味ではより広義の意味での批判と整合性があると思われる。 組織改革の領域においては、ナラティヴ・アプローチの観点から、カリキュラムレベルの改革に加え、クラス運営や授業構成、スモールグループの効果など、よりミクロレベルにおける集団のダイナミックスにおいて研究と接点があることがわかった。 批判重視型教育実践の資料収集については十分とは言えないが、いくつかの参考となる事例を集めることができた。英語教育ではディベートやスピーチなど、他者と意見を交換したりすり寄せたりする過程において自らの思考を深める実例が多く、異文化コミュニケーション教育ではアイデンティティ・ポリティクスにおける権力の側面に気づかせるような実践が見られた。こうした実践を英語教育の教材において接続する可能性を見出すことができた。 こうしたそれぞれの研究結果を会合やインターネット上のグループにおいて共有し、意見交換することにより、互いの領域における進捗状況についての共通理解を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度としては理論的理解と批判重視型教育実践の資料収集を行い、それをもとに研究の方向性を定めることが主な狙いであった。 批判的コミュニケーション教育が日本において比較的新しい分野であり、その分野と特に英語教育とが直接つながった実践は少なく、教育実践の資料収集についてはやや遅れている。しかし、理論的理解を進めることにより、英語教育、異文化コミュニケーション教育、組織の領域における批判的コミュニケーション教育との関係が明らかとなってきた。担当者全員がそろっての会合は一度しかもてなかったものの、2~3名の担当者による会合は適宜持つことができ、さらにはインターネット上のグループにおける情報や意見の交換もできた。 以上、今後2年の研究において進むべき方法を包括的に描き出すことができたことを鑑み、批判的コミュニケーション教育の視点を生かした英語教育実践を開発するにあたって、初年度を終えた時点としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度にやや遅れていた教育実践の資料収集を継続的に行い、英語教育や関連領域としての異文化コミュニケーション教育における批判的教育実践についての具体的なあり方を考察するうえで参考になる、教育実践の分析を続ける。 さらには、理論的理解をもとに初年度に描いた方向性にしたがって具体的に批判的教育実践を開発するにあたり、参考になる実践の参与観察や実践者や研究者へのインタビューを行い、そこから開発における重要な側面を抽出していく。 二年目の年度末には、実際に授業実践のモデルを構築する準備を整え、最終年度には教育実践法を提言する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の予算執行における物品購入の際、予定よりも低価で購入することができたために、残高が生じた。この残額は次年度に書籍代にあてる予定である。
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