2013 Fiscal Year Research-status Report
言語処理技術と多変量解析を用いた中間言語の全体像の解明―新しい研究手法の確立
Project/Area Number |
24520631
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
阿部 真理子 中央大学, 理工学部, 准教授 (90381425)
|
Keywords | 学習者コーパス / 英語学習者 / 習熟度 / 話し言葉 / 書き言葉 / 多変量解析 / 言語処理 |
Research Abstract |
本研究は日本人英語学習者の習熟レベルを一定の精度で判別できる項目を特定し、中間言語の発達の全体像を記述することを目的とする。また同時にその成果が、語学教育の応用研究へと展開される可能性がある研究手法を確立することを目指している。 初年度は、7つの異なる習熟度グループに属する1200名以上の日本人英語学習者(初級・中級・上級)の話し言葉から構成される大規模コーパス(NICTJLE)を分析対象とし、58項目にわたる多種多様な言語項目(語彙・品詞・統語構造・談話構造など)の使用頻度の情報をもとに、多変量解析(対応分析とクラスター分析)を用いて、発達の指標となる言語項目を特定した。さらに話し言葉だけではなく、同様の手法を用いて、東アジアにおける英語学習者の作文コーパス(ICNALE)を分析した。 本年度は、予備研究で扱った言語項目以外にも、新たに分析対象となり得る項目を分析に加えたと同時に、学習者の習熟レベルをより高い精度で判定するために新たな統計手法(階層的クラスター分析とヒートマップを組み合わせた手法)を用いた分析も行った。さらに、学習者と同じタスクを行った英語母語話者のデータを用いることで、両者を識別する項目を特定した。またこれまでの研究過程で生まれた以下のような新たな課題に関しても予備的な研究を進めることができた。(1)作文課題の違いが言語使用に及ぼす影響、(2)習熟度だけではなく、学習者の母語が言語使用に与える影響(3)NICTJLEコーパスに付与されている習熟度尺度の再検討。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は毎年、学会発表を合計3件(国内2件、国外1件)行うことにしているが、初年度は合計6件(国内3件、国外3件)、本年度は国外のみで合計4件(国外4件=AAAL2013, LCR2013, APCLC2014, DH2014)を行い、国内外の幅広い専門家からの評価と助言を仰ぐことができた。論文に関しては、査読なしのものをふくめると合計5件(日本語論文4本、英語論文1本)を成果として出すことができた。 また学習者が誤りやすい言語項目についても、『英語学習者コーパス活用ハンドブック』に一章分を執筆した。そして英語論文がLearner corpus studies in Asia and the worldに掲載された。初年度に引き続き、研究発表および論文の出版とも、次に当初の計画以上に十分な量と質のものを産出することができた同時におおむね良い評価を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った研究発表を論文として出版する。また本年度はすでに3件の国際学会における研究発表が採択されているので、研究発表時における評価と助言を元にその論文化も進める。 ①話し言葉データ(NICT JLE Corpus)をさまざまな言語項目から階層的クラスター分析とヒートマップを用いて分析した結果を論文化する。②英語学習者と母語話者の言語使用に関する研究結果を論文化する。③作文課題の違いが言語使用に与える影響について、LCSAW2014において研究発表を行う。さらに、話し言葉データ(NICT JLE Corpus)に関しても同様にタスクの違いが学習者のパフォーマンスに与える影響について同一の手法を用いた研究を行う予定である。④学習者の習熟度だけではなく母語が言語使用に与える影響について、より詳細に言語項目ごとに質的な分析を進めた研究をTaLC2014にて発表する。⑤スピーキングの習熟度判定を人間が行った場合と自動採点させた場合の類似点・相違点に関して、ALAK2014にて研究発表を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額で購入できる消耗品および図書の購入の必要性が年度末の時点でなったため、翌年度分として繰り越したため。 本年度の経費として利用する。
|