2013 Fiscal Year Research-status Report
社会構成主義教育理論を応用したオンラインドリルの協働的学習法の効果の研究
Project/Area Number |
24520640
|
Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
工藤 雅之 北海道科学大学, 高等教育支援センター, 准教授 (10321374)
|
Keywords | e-ラーニング / オンライン協働学習 / ストレス要因 / 第二言語学習 |
Research Abstract |
本研究は、我が国の高等教育機関で広く取り沙汰されている高等教育機関における学力低下問題を欧米などで進行する非伝統的な学習者の問題と共通の問題として捉え、欧米の教育や先進的な教育介入事例では、社会構成主義的な手法を以て問題解決に至っている事に鑑み、学習者中心学習の根幹である協働学習を導入し、問題の解決を試みるものである。本年度の成果として、基礎研究からドリル型学習や協働学習環境で多く見られる学習ストレスに関する示唆や一定の結論を導き出す事ができた。 具体的には、協働学習環境に於いて学習者の生産的なパフォーマンスや協働のメリットを活かすのに極めて重要要因である学習時のストレスを引き起こす要因(ストレッサー)に対して、いくつかの要素が交絡して影響を及ぼすことがわかり、ストレッサーに大きな影響を与える心的要因に関する基礎研究が進んだことである。すなわち協働学習環境においては、タスクに対する自己効力の高さがストレスの感受性に対して重要な要因であることが分かった。特にタスクに対する自己効力が低い場合、適切な教授方略をデザインすることが強く望まれ、このデザインは学習者のパフォーマンスにまで影響することが明らかになった。またオンライン協働学習環境で強く関わると思われた認知負荷とストレスの関連は、タスクにおける一部のストレッサーと強い相関があることが証明されたが、すべてのストレッサーと関わっていない事が実験のデータから明らかになった。このようにオンライン協働学習環境という特殊な学習環境でのストレスの要因と自己効力の交絡が明らかになったことで、効果的なインストラクショナルデザインの構築への一歩が踏み出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年同様研究の進捗は「遅れている」と言わざるを得ない。昨年度も理由として挙げたが、基礎研究として整理しなければならない要因が当初の見込みよりも多くなり、その整理に時間を要しているからである。しかしながら、前項でも述べたように、昨年度より継続して来た協働学習環境で与えれたタスクに対するストレス(ストレッサー)と自己効力のレベルの相互関係が整理できた事から、今後は実証的にそれらの要因を当該研究フィールドで試行することになる。 昨年度立てた計画によれば、オンライン協働学習者の特異性を丹念に観察し、どのような問題を抱えているかを分析し、解決手法を与える工程は非常に重要であるとしている。この点について言及するならば、研究は大きく進展したと言え、今年度の研究活動はスムースなものになることが期待できる。特に当該研究フィールドに多く存在すると思われる自己効力の低い学習者に対するインストラクショナルデザインとして、ワークトエグザンプルが有効であることが、基礎研究から導き出せたことは大きな前進であった。この知見は、本研究に深い示唆を与えるもので、実験を行う高等専門学校で活用できるものである。ドリル学習にワークトエグザンプルを提供し、協働を行ったグループではストレスを低く抑えられることを実証的に検証したい。同時にパフォーマンスにやその他の学習要素にどのような影響があるかを慎重に検証したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画は、主にデザイン・開発段階であり、基礎研究の結果を具体案として策定することであった。達成度の項にも書いたが、基礎研究レベルにおける調査内容が多くあったため、研究は遅れている。今年度は昨年度で達成すべきだった事柄を前期中に終了し、研究協力者の助力を得て、協働オンライン学習環境の開発に取り掛かる。具体的には、年度早々に実験協力校にて視察を行い、開発環境を理解し、迅速に協働環境の設営にとりかかる。その開発・敷設が終わるとともに実際に協働学習条件の中で使用し、実験・形成的評価を行い、インストラクショナルデザインの最適化を図りたい。 平成26年度は、25年度までの基礎研究の知見から亀山(2007)の英語文法習得用ドリル群に対して、アドオンの協働環境を敷設する。亀山(2007)のコンポーネントは、オリジナルのインターフェース・学習マネジメントサービスを持っているが、協働のコンポーネントを持たない。このドリル群に対して、オンライン協働に必要な協働環境を提供し、学習者が必要に応じて協働環境で教え合いなどの社会構成主義的な学びを行うことができるような環境を開発する。学習環境を付与できたら、当初の計画通りに1) 学習効果、2) 学習動機、3) 転移能力、4) 協働ストレス、5) 自己効力の5つの要素について変化を観察する。このフェイズでは開発期間を短縮し、即時実験及び形成的評価に移れるよう配慮する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度計画した額よりも本年度使用額が低くなった最も大きな理由は、前項で説明したように、基礎研究に想定よりも多くの時間を費やしたからであり、開発段階に到達することができなかったからである。そのため技術者へ支払われる予定であった謝金などで当初予算額と使用額の間に差が出来てしまった。 遅れているものの、今年度までに基礎研究がある程度終了したことから、今後は、開発段階に入り、技術者への謝金など昨年度支払うべき残高を今年度使用したいと考えている。また開発段階に入ることから、機器購入などの資金も順次使用することになる。
|