2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520643
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
石鍋 浩 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (90424051)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外国語教育 / 第二言語習得 |
Research Abstract |
学習環境下の脳活動計測とその結果に基づく学習過程や教授法が検討されている。外国語習得過程における脳機能の検討も行われつつある。本研究は,外国語文法規則の習得過程を脳機能に基づき明らかにすることを目的としている。 平成24年度は,脳機能計測機器の一種である近赤外分光法 (NIRS ; Near infra-red spectroscopy) を用い,複数言語の母語話者による文法操作時の脳活動を計測した。日本語母語話者および韓国語母語話者を対象に母語の文法操作時の脳活動を計測則した。結果,日本語母語話者,韓国語母語話者ともブローカ野近傍において賦活が認められた。 また,予備的な実験として外国語学習に伴う脳活動について検討を行った。韓国語知識のない日本語母語話者を対象に,韓国語授業を実施した。授業終了1週後と3週後の2回,韓国語動詞文法規則生成時の脳機能を計測した。3週後の計測実施前に韓国語の復習を実施し第二習得過程の状態を実験的に作った。脳機能計測と共に実施した行動実験の結果,1週後に比し3週後の成績向上が確認された。脳機能計測の結果,1週後3週後とも左半球Broca野近傍で賦活がみられた。本研究の結果から,第二言語知識ゼロで学習を始めた直後から左半球Broca野近傍が第二言語習得に関与していることが示された。 脳機能計測結果を学習過程分析のための一指標としての応用の可能性が期待されている。ある刺激に対する反応が第二言語習得に関与する脳活動を反映したものかどうかをモニターするツールとしての応用が考えられる。また,従来のテストによる評価の方法に加え,脳機能計測結果を併用することにより,より詳細な学習過程の可視化と評価の可能性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,母語の文法操作時の脳活動の検討を主眼に置いた。現状,目的の達成度は遅れている。被験者を募集するに当たり,日本語母語話者は一定数のサンプルを確保することができた。しかし,外国語母語話者が当初の予定通り集まらなかった。この点が,研究が遅れている大きな原因である。 一方,外国語の学習に伴う脳機能の計測に関する予備的な実験に着手することができた。25年度以降は,学習者による外国語文法操作時の脳活動計測と言語学的考察を通し,学習者による文法操作時の脳活動の特徴を明らかにすることまでを目的としている。特に,ゼロの段階から外国語の学習を始め,学習直後の状況を実験的に作り出し,脳機能を計測することができた。この点において,25年度以降の研究を進めていく上で一つの指針が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究を通し,被験者の確保が大きな課題であった。この反省を踏まえ,25年度以降は,募集が容易である日本語母語話者を対象とし,外国語学習の際の文法規則習得過程を脳機能に基づき明らかにすることを目的とする。 また,計測時の被験者の負担軽減も再考する必要がある。代表者はこれまでも計測用の装置を使用してきており,装置の操作自体には習熟している。しかし,プローブの頭部への装着,3次元解析装置を用いた計測部位の計測,PCを介した刺激の提示など計測に伴う準備に時間がかかるという弊害があった。その問題を解消するため,今年度から実験助手を雇用し,被験者のさらなる負担軽減に努める。 昨年度の反省を踏まえ,当初予定していた自然言語の学習状況の設定に加え,人工的に作成した文法規則の習得状況についての検討も行う。本実験は日本語母語話者のみを対象とすることにより,予定のサンプル数の確保に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は以下のように使用する予定である。物品費15万円,旅費20万円,謝金40万円,その他5万円。さらに,今年度から実験助手を雇用する。謝金は,昨年度の繰り越し金から支出する。
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Research Products
(1 results)