2012 Fiscal Year Research-status Report
年少者及び成人学習者を対象としたプラグマティックス指導とその効果
Project/Area Number |
24520657
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石原 紀子 法政大学, 経営学部, 准教授 (90523126)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度の当初の研究計画は、5-12歳の年少学習者にプラグマティックス指導が有効であるか検証するため紙芝居を媒体としたストーリー・テリングとディスカッションを用いて英語のプラグマティックスを指導しその効果を検証するというものであった。手始めに、指導教材となる絵本や紙芝居を探し、ストーリー・テリングの後のディスカッションについても新しい指導計画を作成した。次に、年少者の教員として経験のある研究協力者を募り、現役の教員合計4名と会議を重ねて、具体的な研究計画やプラグマティックス指導の詳細を話し合った。更に、年少者やその保護者を対象にした研究同意書を英語と日本語で作成し、研究機関に研究許可を申請するための準備をした。その後、小学生の研究参加者を募るため、小学生の英語指導の現場に参加したり、研究計画を説明するため保護者と面談したりしたが、ビデオ撮影に対する保護者の不信感などが原因となり研究の承諾を得ることができなかった。 そのため平成24年度の後半には、研究計画を方向転換し、まずは小学校教育の現場で英語がどの様に指導されているのかを見学し、そこにプラグマティックス指導をどの様に導入できるかを分析する方針とした。この方針は、当初の計画のようにこちらが作成した外部の指導案を小学校などの授業に持ち込もうとするのではなく、既に小学校で行われている英語教育の随所にプラグマティックス的な観点から指導を考え、小規模ではあるが重要なプラグマティックス指導の実現を目指すものである。平成24年度末までには合計12時間の小学校の英語の授業を見学し、小学校の教員のインタビューを開始した。また年少者を対象にしたプラグマティックス指導の予備研究(平成23年度にデータ収集)の結果を、10月の全国語学教育学会及びSLRF(Second Language Research Forum)学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように多少の方向転換はあったものの、初等教育の英語にプラグマティックス指導を導入するという全般的な方向性には変更がなく、ほぼ計画通りに進んでいると言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
年少学習者対象のプラグマティックス指導に関する研究については、平成24年度に小学校の英語の授業を見学することによって得たデータ(フィールド・ノート)を検証し、初等教育の英語の授業でプラグマティックス指導がどの様になされているか、あるいはなされていないのか、またプラグマティックス指導が今後展開できる可能性は授業のどこにあるのかを引き続き分析する。この結果は10月の全国語学教育学会(JALT)にて発表を予定している。 また、初等教育に携わる教員の異文化体験やプラグマティックス意識はどの様なものか等を考察する教員教育の観点からの研究も、本年度以降の実施を検討してみたい。教員が自ら体験した異文化間コミュニケーションやプラグマティックス意識は、授業での英語の指導法に深い関連があると思われ、今後の教員養成教育への示唆に富むと思われるからである。 更に、海外のEFL (English as a Foreign Language) の一例としては、イタリアでは1991年より初等教育に英語教育が導入されており様々な教員養成が行われているので、2011年より小学校で外国語指導が義務付けられた日本の英語教育へのヒントがあるかもしれない。イタリアでの英語科教員養成のシステムの中にプラグマティックスがどの様に導入されているのか、またそれに伴い教員のプラグマティックス意識はどの様に発達し、実際にプラグマティックス指導はどの様に行われているのかなどについて検証は可能であり且つ有効であるのか研究計画の可能性を模索してみたい。 そしてプラグマティックス指導の重要性や指導法などに関する認知度を、国内外で上げていく出版・講演活動も今後とも続けて行く方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現時点までの研究成果を中間報告という形であっても国内外の学会で発表し(具体的には全国語学教育学会、及びアメリカ応用言語学会を予定)、同じ分野の研究者との対話を深めることで今後の研究の糧としたい。このため学会参加に研究費の一部を支出する予定である。 これと並行し、本務校で担当している英語科目の授業でプラグティックス指導を続け、大学生のプラグマティックスに関する学びも検証し始め、データ収集を開始する。これに伴う経費を25年度予算から支出する。 また、日本の英語教員のプラグマティックス指導についての認知度を高め、指導を奨励していくため、わかりやすい教員対象の指導書を日本語で執筆する可能性についても検討したい。このため出版のために研究費を使用する可能性もある。
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