2013 Fiscal Year Research-status Report
第2言語ライティング行動の長期的発達:ダイナミックシステム理論からのアプローチ
Project/Area Number |
24520666
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐々木 みゆき 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (60241147)
|
Keywords | 第二言語ライティング力 / ダイナミックシステムアプローチ / 日本人英語学習者 / 多機能言語能力 / 第二言語ライティング方略 / プロトコールデータ / 質的研究 / 量的研究 |
Research Abstract |
本研究は、日本人大学生の英語力、日英作文力、日英語のライティング知識や方略が、3年半の間にどのように変化し相互に影響しあうかを、現在応用言語学の分野で最も注目されているDynamic Systems Theory Approach(DST:ダイナミックシステム理論アプローチ)の視点から明らかにすることを目的にしている。人間の言語発達を「様々な要素が相互に関係しあい、直線的でない発達をとげる複雑なシステム」と捉えるDSTを研究枠とすることは、従来別々のものとされてきた第1言語と第2言語の作文力をひとつの「多機能言語能力」として観察するのに有効である。4年間の研究の2年目である平成25年度は、何人かの学生が中期・長期の留学に出発する直前の7月に、初年度と同じように、以下のように研究参与者25名からデータ採取を行った。(1)参与者に個別に設備のある研究室に来て英語説明文を書いてもらい、書き終わった直後に書いている時の様子を録画したビデオテープを見ながら、書いている最中に何を考えていたかを逐次話してもらい、ICレコーダーに録音した。採取したデータは、直後に転記した。(2)国語作文も似たような題で書いてもらい方略について聞いた。日英の作文の題はランダムに毎年違うものがあたるようにした。(3)標準英語力測定テストを用いて、一般的な英語力も測定した。(4)上記量的データとは別に、ケーススタディの手法を使って被験者に個別にインタビューを行い、日英語で『書く』ことについての知識や心象モデル、現在までの学習経験や、英語一般や英作文に対する自信や動機付けなどについても調査した。さらに、留学する学生の中で同意した被験者3名に、留学中に「英語を書くこと」に対して感じた事、考えた事を記した日記を書いてもらい、”insider view”データとして提出してもらうよう依頼した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度と同様に、25名の参与者から量的データ(参与者の英作文と日本語作文と、それらの作文の専門家による評価、英作文のミクロ的な方略と日本語作文のミクロ的な方略に関するプロとコールデータとそれを転記したもの、英語標準テストによる参与者の一般英語力)と質的データ(日本語で「書く」ことについての知識や心象モデル、過去1年間の学習経験や、英語一般や英作文に対する自信や動機づけなどについてのインタビューデータと、そのデータを転記したもの)を、当初の予定通り採取できた。しかし、25名分の日英作文方略に関するプロトコールデータの分類は、膨大な時間を要するため、現在の時点ではまだ簡潔していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は以下のように研究を進める予定である。 (1) 平成25年に採取した「書く方略データ」の分類: 平成25年度にやり残した日英作文の方略に関するプロトコールデータの分類を完結する。 (2) 参与者3年次のデータ採取: 中期や長期の留学から帰国したり、出発する直前の3年生7月に、平成25年の7月の時と同じように日英作文を書いてもらい、日英作文力や日英語を書く際の方略、英語力の量的データを採取する。又、日英語で『書く』ことについての知識や心象モデル、英語一般や英作文に対する自信や動機づけについての聞き取りインタビューも合わせて行う。留学する学生の中で同意する参与者がいれば、留学中に「英語を書くこと」に対して感じた事、考えた事を記した日記を書いてもらい、”insider view”データとして提出してもらう。 (3)参与者3年次のデータ処理: 上記のデータのうち、国語作文は国語作文の専門家2人に、英語作文は英語作文の専門家2人にそれぞれ、妥当性の高い(国語は第1言語としての、英語は第2言語としての)評価基準を用いて採点してもらう。英作文方略の転記データは、Sasaki (2007)で使用した、本研究の参与者にとって最適と思われる方略分類法でコーディングし、記録する。
|