2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520708
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
佐藤 久美子 玉川大学, 教育学研究科, 教授 (60154043)
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Keywords | 絵本の読み聞かせ / インタラクション / ダイアロジック・リーディング / 児童 / 英語教材 |
Research Abstract |
絵本の読み聞かせをしている際に、聞き手が理解したことや考えたこと、感想などを自由に発言し、英語を積極的に使用するインタラクションを高める英語絵本の読み聞かせの手法を解明することが研究目的である。 そこで、Whitehurst(2013)によるダイアロジック・リーディングの手法を参考にしながら、①PEER(Prompt=内容を思い出させ、Evaluate=発言をほめ、Expand=発言内容を拡張、Repeat=反復)する手法を多用し、②CROWD(文の後にブランクを置き発話を促す、内容について質問、絵に焦点を当てながら読む、Wh疑問文による質問、児童の経験に関連しながら読む)を用いてインタラクションを行いながら読み聞かせを行うグループAと、通常の読み聞かせを行うグループBの発話内容を比較した。調査対象は、深谷市の幼稚園と小田原市の保育園の5歳児それぞれ30名であり、3回にわたり調査を行った。 すべてビデオで撮影し、発話内容を書き起こし分析した結果、インタラクションを多用したAグループでは、自分たちの経験に基づき自由に発言する機会が促され、絵本には描かれていないことを想像する力や表現する力がつくこと、知っている英語を使ったり発音を真似して答えようとする機会が増えること、さらに、日常生活では確立できていない日本語の語彙を使用して答える機会が見られること、英語と日本語の違いに気づき、言葉についてのメタ認知の力がつくことが明きらかにされた。インタラクションをとることで、読み聞かせ時の集中力もより高まった。 これらの手法を用いて、音の出るペンを使い絵本を読む3~8歳児を対象とした絵本教材を開発、出版した。一方的に読み聞かせを行うCDでは得られない、インタラクションを促す絵本教材である。平成26年度はこうした教材や手法を用いて、小学校での指導調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成12年度の研究成果から、母親が幼児に読み聞かせなどをしている時の発話タイミング、発話持続時間、発話速度を計測した結果、発話量の多い幼児の母親の応答タイミングは発話量の少ない幼児の母親よりも速く、また発話時間が短いこと、さらに話しかけるときの発話速度が遅いことが判明した。こうした母親の発話態度が、幼児の絵本の理解過程にも影響し、幼児が絵本の内容を話すときの発話量にも影響を与える可能性があることを明らかにしたが、今回の5歳児を対象とした調査から、児童への読み聞かせの特徴は、母親が幼児に読み聞かせを行う上での特徴と通じるところがあることが明らかになった。児童が話したことを繰り返す反復の多用や、発話を促す短い語りかけ、質問もまた、児童の発話や読み手とのインタラクションを促し、かつ、言語メタ認知力も増加すことが明らかになってきた。その意味で、児童の絵本の理解過程、および、理解と発話を促す読み方の特徴の解明に一歩近づいたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
絵本の読み聞かせにおいて、聞き手の集中力が増し、児童であれば発言も増える、インタラクションを用いた読み語りの手法や読み手の読み語りの特徴が明らかになったので、平成25年度はこの手法を用いた時の、聞き手の理解度に焦点を当てて研究を行う予定である。1~3歳の幼児については、インタラクションを積極的に図る母親と、そうとは言えない母親の子供を対象として、アイトラッカーを用いて絵本の理解度を計測する。4歳~8歳の児童については、think aloudを用いて対面調査を行う予定である。さらに、質問をして、内容の理解度の調査を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に、アイトラッカーなどの物品費を予定していたが、大学の施設にある物品を借用できたので、物品費が大幅に削減できた。第二に、分析の手法や方法について、静岡大学などに出張して指導を受けたり、相談したりする出張費を予定していたが、先方が来てくださり、出張費が大幅にカットできた。第三に、分析やデータ処理についての謝金を予定していたが、学生や院生が研究に興味を持ち、自発的に行ったため、謝金費がカットされた。以上が大きな理由である。 第一に、アイトラッカーなどの物品の使用率が学内で高まったため、借用が難しく、来年度の研究では予定通り物品を購入してデータを分析する予定である。第二に、データ分析やデータ処理については、2014年度から大学院プロパーで教えるため、研究に参加する学生がいないこと、院生の数も不足することから、謝金を出して研究を遂行する。また、データ分析手法の相談なども、2014年度はこちらから出張予定である。
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