2012 Fiscal Year Research-status Report
複雑で本物の状況において学習者の英語使用を生起、内化させる協働作業の実施と評価
Project/Area Number |
24520713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
保崎 則雄 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70221562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山地 弘起 長崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10220360)
鈴木 広子 東海大学, 付置研究所, 教授 (50191789)
北村 史 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (90613860)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Study abroad |
Research Abstract |
本年度は、2012年9月に実施した「米国海外協働研修」(参加者学部3年生10名)について事前の見通し、事後の評価の両方で分析をした。具体的には、参加者は研修実施3、4週間前に、研修でどのようなことを学び、学びになるのかということを、事前アンケート(10項目+1、2行程度の理由記述)を用いて予測させた。また、プログラム実施1週間後には、活動を振り返って実際にどのようなことに気づき、学んだのかということを同様のアンケート用紙を用いて記入した。さらに、事後のデータとして、ひとりひとりずつ、個別の面接(半構造化面接法)を行った。内容は、研修について具体例や出来事から学びの軌跡を振り返ってもらい、それぞれの学び、気づきがどのようなイベント(出来事)に起因しているのかということを本人に語ってもらった。 事前のアンケート結果からは、言語、コミュニケーション上達への期待が大きいことがわかり、事後のアンケート結果からは、協働作業での学びの指摘が予想以上に大きかった。また、各参加者が、複数の場面や状況において気づきや学びを得て、英語使用意識の変容につなげていることがわかった。現地校でのプレゼンテーションでは、英語上級者は聴衆の反応に対応して伝え方を調整する意識が強まっていることがわかり、その意識は複数回の実施で段階的に変化していた。 個人の課題が明確であった者は、目的遂行のための明確な言語使用ができ、それを達成した段階で、自己効力感を増していた。他方、言語運用能力の低い者が高い者に頼ってしまい、参加が周辺的となり、意識変容に結びつきにくいだろうとも思われた。 総括すると、1) グループの編成の工夫(言語運用能力レベルや海外経験レベルをグループ内で同じ水準にさせること)、2) 個別の課題の明確化、3) 協働場面と個別場面の量配分の工夫、といったプログラムデザインの必要性が浮き彫りとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、いくつかの点において当初の予定通りにはいかなかったが、概ね順調な計画、立案、実施、データ収集、分析ができたと考える。具体的には、米国協働研修の計画、実施前の準備作業(取材、ノンリニア編集、デジタルプレゼンの練習、英語表現の錬成など)、それに伴う事前、事後アンケート、事後のリフレクションエッセイ、個別の事後インタビュー実施と実際に米国協働研修に参加した学生は、全部で10名であり、そのうち2名は研修終了後に、現地(Boston)から直接1年間の留学に行ったため、事後アンケート、事後面接ができず、実際にインタビューに参加した者は8名であった。2013年度の予定としては、同様の研修を実施し、事後のインタビュー参加者を増やし、年度毎の違い、共通点を明らかにするという課題が残った。今年度は、昨年度のプログラムをマイナー修正して実施する予定であり、事前と事後のアンケート実施において、昨年同様に事後エッセイを書いてもらう予定である。昨年度は、そのエッセイの分析まで手が回らなかったので、今年度実施後には、昨年度のエッセイと比較対象して分析を加えられるのであれば、加える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
この海外研修では、開講科目(演習:Educational Communication研究)の制約があり、毎年参加人数が毎年10名前後とやや少数である。また、参加者の中には英語力のばらつきもあることが予想されるため、ひとりひとりから得られる情報をさらに深めて、それを参加者の先行経験、先行知識とさらにていねいに絡め合わせて分析するということを心掛けたいと考える。中には海外在住経験のある学生もいることも予想されるため、そのような属性についても、フェイスシートの属性を尋ねる部分を昨年のものをさらに精査、修正し、分析対象とする予定である。 相手校では、日本語の授業参観、授業でのTA(Teaching Assistant)経験、現地校での授業聴講(米国開拓史、ICT授業環境)、交流会、現地小学校訪問などを本年も予定したいと考えており、事後のインタビューで個々の活動についての参加、評価、課題などについても尋ねたいと思う。協働作業時の葛藤、トラブルなどとどのように向かい合ったのかということも事後のインタビューではさらに丁寧に聞き出したいと考える。そのためには、インタビューワーが、参加者であるという状態とするのか、あるいは、実施責任者(=研究代表者)が一歩離れてインタビューを実施するのかということを熟慮する必要があるかもしれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
相手校は昨年度と同じ大学(=Case Western Reserve Univeristy)を予定しており、現在訪問期間について詳細を詰めている。研修実施に関しては、昨年度と大きな違いは予定していない。また、相手校の学生は、9月入学の1年生数が最終的に決定するのが8月末あたりであるので、プログラム実施直前まで履修者名簿は明らかにされない。 相手校でのプレゼンに使用する材料、取材にかかる費用、J-pop culureの紹介にかかる費用などは、昨年同様に考えている。今年度の3グループのプレゼンのテーマは現時点では、まだ未定であるため、どれぐらいの費用がかかるのか分からない部分もあるが、データ収集、分析、資料作成などは昨年同様の費用がかかるものと予定している。 事後の半構造化インタビューの精度を上げるということも意識し、必要に応じて質問項目を変えるということにも取り組みたいと考える。またインタビューを書き起こす作業は、昨年同様に研究室の大学院生を中心にアルバイト謝金を支払い実施する予定である。現地校での授業聴講にかかる費用は、昨年同様のコマ数(2コマ)を予定しているが、スケジュール、現地校でのプレゼンの回数の状況においては、2コマ増やすということも視野に入れている。それにかかる講師料というものが多少増えるかもしれない。 また、書き起こしの日本語入力の分類、カテゴリー分けなどに、それ用のプログラムもあるため、今年度は、Nvivoというプログラムを購入し、使用することも考えたいと思う。
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