2014 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス地域史学研究-文書館・大学・歴史協会と地域史研究の相互関係
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24520723
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
石井 健 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30303043)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 史料学 / アーカイヴズ学 / イギリス史 / 地域史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、歴史研究における地域史研究の意義とさらなる可能性を模索するため、これまで行われてきた地域史叙述のあり方・地域史研究の方法論を史学史的かつ社会史的に再考することを目的とし、具体的には、イギリスにおける地域史研究のあり方・地域史叙述のあり方を、文書館、大学、歴史協会といった地域史研究・叙述を支える組織・施設・機関との関係史を通して考察することである。 本年度は、前年度の研究をさらに進めるべく、引き続きレスタシア考古学歴史学協会を取り上げ、この機関が地域史研究・郷土史研究に果たした役割について調査し、考察した。 より具体的には、当該協会所属の各会員を、センサスを代表とする諸史料と突き合わせて名寄せを行い、可能な限り詳細な個人史データを収集し、その上で、協会全体がもつ社会集団としての特徴を分析した。その結果、第一次世界大戦までの郷土史協会が、地域の名望家による一種の社交団体として機能しており、同時代の政治クラブと相似する社会集団的特徴(階級閉鎖的、男性独占)を有していたこと、しかし、団体が結成された19世紀中葉から20世紀初頭に至るあいだに、次第にその特徴にかすかな変化が見られるようになったこと(とりわけ、性差の問題)、またそれと併行して団体の活動が専門家による発表の場としての性格を強め、そのため歴史叙述を残す少数集団とそうでない多数派との二極分化が進んで行ったことも分析結果から見えてきた。 以上をふまえ、研究期間全体を通した成果としては、次の点を指摘できる。即ち、19世紀中葉以来、地域の学術団体や大学が地域史を受容する地域の社会集団の涵養という役割を果たし、地域史叙述がこの集団を基盤に生み出されてきた点である。このことは、これからの地域史研究を進めていく上で是非とも考慮すべき点であり、その意味で本研究は課題に対する一定の解答が得られたと言ってよい。
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Research Products
(1 results)