2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日英米における出版・読書文化の大衆化の比較研究
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24520730
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
前島 志保 法政大学, 経営学部, 准教授 (10535173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本 / 英国 / 米国 / 出版史 / 読書文化 / 比較文化 / メディア / ジェンダー |
Research Abstract |
今年度は、まず、19世紀後半から20世紀前半までの日本における視覚表現による報道の展開の特徴を英米の事例と対比しながら考察する研究をひと段落させた。これは、神奈川大学における国際シンポジウムおよびAsian Studies Conference Japan(ASCJ)における発表として結実した。シンポジウムでの研究発表は参加した研究者による論文集に収められる予定である。 また、主に英国における出版史研究 およびメディア研究、ジャーナリズム研究の先行研究を調査し、日本の事例と対比研究するにあたって必要な論点の割り出しを行った。このことによって、次年度以降の調査・分析作業の基盤をより着実に固めることができた。 さらに、国内外の研究者との国際的な協同研究Journalism and the Japanese Newspaper in Japanese Studies(弘前大学准教授 Anthony S. Rausch氏主宰)に参加することも決まった。この協同研究では、今年度と次年度の研究成果を踏まえ、日本における定期刊行物の展開を概観し、日本の定期刊行物を用いて研究を行うにあたって留意すべき点について考察する予定である。なお、本協同研究は、参加研究者による論文集の出版を計画している。 加えて、日本での予備調査がほぼ完成したことから、第三年度に計画していた「近代的な日常生活」のイメージや言説に関する調査・考察のうち日本関連のものを行い、法政大学国際日本学研究所の研究会、および、カナダの日本学会(Japan Studies Association of Canada, JSAC)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の前半は、当初の予定通り、前年度からの研究をもとに、19世紀後半から20世紀前半までの日本における視覚表現による報道の展開の特徴を英米の事例と対比しながら考察する研究をひと段落させた。これは、神奈川大学における国際シンポジウム、および、Asian Studies Conference Japan(ASCJ)における発表として結実した。 本年度の後半は、主に英国における出版史研究 およびメディア研究、ジャーナリズム研究の先行研究を精査し、日本の事例と対比研究するにあたって必要な論点の割り出しを行った。当初計画では英国での調査を中心に行う計画を立てていたが、結果的には、そのために必要となる予備調査に本年後半を費やすこととなった。 これには二点理由が挙げられる。第一に、長年の蓄積があるこの分野での先行研究を収集し読み込み論点を洗い出す作業に時間がかかった、ということ。第二に、本研究を最終的に大きな研究史の文脈に位置づけるためには、個別の事例研究のみならず最近のメディア研究、ジャーナリズム研究全般の動向を押さえておく必要もあるため、検討すべき先行研究の範囲を広げた、ということである。こうした作業の結果、次年度以降の調査・分析の基盤が当初予定よりもより着実に固められた。 また、日本での予備調査がほぼ完成したことから、第三年度に計画していた「近代的な日常生活」のイメージや言説に関する調査・考察のうち日本関連のものを行い、法政大学国際日本学研究所の研究会、および、カナダの日本学会(Japan Studies Association of Canada, JSAC)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、本年度英国に関する先行研究の調査と同様、主に米国における出版史研究 およびメディア研究、ジャーナリズム研究の先行研究を精査し、日本の事例と対比研究するにあたって必要な論点の割り出しを行いたい。これにより、英米での調査の焦点がより明確になり、その後の英米の事例の分析・考察も確実になると思われる。 また、こうした事前準備を踏まえ、19世紀末から20世紀前半の出版の大衆化の促進に貢献した新聞・雑誌と日本の事例を比較検討すべく、当初計画で第一年目・第二年目に計画していた英米の図書館や資料館における英国における調査を第二年目・第三年目に行いたい。 当初の予定では、先に英国での調査を行い次に米国での調査を行う計画であった。しかし、第三年目にあたる2014年の夏に三年に一度のEuropean Association for Japanese Studies (EAJS)の国際会議が行われるので、先(第二年目)に米国での調査を行い、第三年目にEAJSへの参加とあわせて英国での調査も行いたいと考えている。並行して、日本国内の図書館・資料館での調査も行う。 以上のような手順を踏みながら、戦間期日本における出版・読書文化の大衆化現象の特徴を、英米の事例と対比しつつ考察したい。また、余裕があれば、調査を行った定期刊行物に描かれた「近代的な日常生活」のイメージや言説についての日英米の対比研究も行いたい。研究成果は、日本比較文学会、日本マス・コミュニケーション学会、日本出版学会、20世紀メディア研究所、Association for Asian Studies、Association for Japanese Literary Studies、ASCJ、EAJS、JSAC等、国内外の学会・研究会で発表し、関連学術誌の雑誌投稿論文や書籍の形で出版・公表していくつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第二年目は、研究費の大部分を次の四点に充てる予定である。 第一に、主に米国における出版史研究 およびメディア研究、ジャーナリズム研究の先行研究の収集・調査である。これにより、日本の事例と対比研究するにあたって必要な論点の割り出しを行う。こうした論文の複写や書籍の購入を予定している。 第二に、主に19世紀末から20世紀前半の米国における出版の大衆化の促進に貢献した新聞・雑誌の調査である。アメリカ議会図書館(Library of Congress)、ニューヨーク公共図書館(New York Public Library)、書店、古書店での資料調査を予定している。この旅費・滞在費・資料複写費・資料輸送費などに研究費を充てたい。 第三に、日本国内での資料収集である。日本の定期刊行物の編集手法の変遷に関する全体的な調査はほぼ完了したが、引き続き、第一年度で明らかになってきた重要な論点(編集・営業手法の変化、読書規範と実際の読書行為の関係、それらへの性差の関与)を中心に、資料収集と分析を行っていきたい。東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センター、国立国会図書館、日本近代文学館、お茶の水図書館、東京大学大学院政治学研究科附属近代日本法政史料センター(明治新聞雑誌文庫)、東京大学情報学環・学際情報学府図書室、昭和館図書室、書店、古書店などでの資料調査を予定している。 第四に、研究成果の国内外での発表、および国内外の学術誌への論文の投稿である。こうした発表のための旅費や滞在費、参加費、投稿費、ネイティブ・スピーカーによる英文チェック(英語論文の場合)への謝礼などに研究費を使いたい。
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Research Products
(5 results)