2014 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける航海信仰の伝播・融合・転生―16~19世紀の媽祖系信仰を中心に
Project/Area Number |
24520731
|
Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
藤田 明良 天理大学, 国際学部, 教授 (50309514)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 航海信仰(中国・台湾・韓国) / 媽祖(中国・台湾・マレーシア) / 天妃 / 船玉神 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、16世紀から19世紀の日本列島に残る媽祖系信仰の遺物・遺跡・伝承を基軸的な素材として、東アジアにおける航海信仰の伝播・融合・転生の文化交渉的様相と、その背景をなすヒト・モノ・情報の交流の具体相との関連を解明することである。申請者は本研究の開始前から、日本各地の古媽祖像とその関係史料の網羅的調査と、台湾・中国・韓国で対照のための調査を実施し、収集資料の整理と検証を進めながら、国内外の関連研究集会や学術刊行物に基礎的な成果公表を行ってきた。 本研究では、国内調査によって、鹿児島の媽祖堂や唐寺や関東・東北沿岸の天妃社から流布した守護札の存在を確認、また、近世出版物の影響で各地の町人上層に媽祖情報が伝播したことや、北前船主が船の守護神として祀った中国製神像や船頭・船員との契約儀礼の場に祀られた媽祖をモデルとする船玉神像の事例を収集し、さらに近世沖縄の船方衆と媽祖との関係を検証した。同時に、台湾の土地公や王爺等の他の信仰と媽祖信仰の位相や、渤海湾周辺の在来信仰と媽祖信仰の融合の具体相を解明する海外調査を実施した。 その結果、①日本列島に現存する媽祖像には、16~17世紀の華人の移動・移住に伴うものと、18世紀以降の航海信仰の日本的展開(ローカル化)の中で作成されたものの、2系統が存在する。②後者は、日本在来の諸信仰と融合しながら伝播していく場合が多く、また、近世的水上交通体系に伴って誕生した船玉神は、媽祖をモデルとした画像や由緒を持つ例が少なくない。③航海信仰の融合や転生は、16世紀以降に媽祖信仰が伝播する台湾や中国北部でもみられ、朝鮮半島にもモチーフが共通する伝承があるなど、東アジア共通の事象として捉えられる、という結論と見通しを獲得することができた。
|
Research Products
(1 results)