2012 Fiscal Year Research-status Report
中世鎌倉地域における寺院什物帳(文物台帳)と請来遺品(唐物)の基礎的研究
Project/Area Number |
24520732
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
古川 元也 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 主任学芸員 (60332392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小井川 理 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, その他 (80589846)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鎌倉 / 中世 / 唐物 / 寺院 / 資料 / 什物 / 文化財 / 日本 |
Research Abstract |
本研究は、日本の中世社会(12世紀半ばから16世紀を措定)に受容された大陸からの請来品、いわゆる「唐物」が、実際にはどのような文物であり、どのような意識を持って受けとめられていたかを明らかにする比較史(資)料論であり、東アジア的視点に立つ文化交流史である。具体的には、中世前期に宋元の文物が移入された鎌倉地域を対象とし、文物台帳としての什物帳を残している寺院史料に検討を加えることにより、当該期における「唐物」の位置づけを明らかにし、同時に種々の請来遺品との比較検討によって具体像を明らかにする基礎的研究である。 3ヶ年で達成すべく設定した4点の目標は、1.中世前期(12世紀半ばから14世紀)に受容された宋元文物を史料的に把握する、2.特に政権がおかれた鎌倉地域でどのように記録されてきたかを明らかにする、3.伝世文物、出土遺物の両面から輸入された文物の実体を把握する、4.諸史料に現れる「唐物」と実体との比較検討をおこなう、であるが、平成24年度は準備の都合もあり、1と3について重点的に研究を進めた。 具体的には、考古分野の遺品研究であり、実査、撮影、調書作成を重点的に行ない、下記の成果物を得た。著作として1.五味文彦、古川元也ほか共編著『世界遺産登録推進 三館連携特別展 武家の古都・鎌倉』(神奈川県立歴史博物館、pp.1-304、10月)、2.「日蓮聖人真蹟遺文の紙背文書」(『日蓮聖人と法華の至宝 第二巻日蓮聖人の真蹟遺文』所収論文、査読無、同朋舎メディアプラン、7月)、口頭報告として1.「中世都市研究としての天文法華の乱」(興風談所研究会、2012年6月5日、岡山興風談所)、2.「仏日庵公物目録と記録される唐物」(貿易陶磁研究会、2012年9月29-30日、青山学院大学)を得た。また、唐物研究の最前線の研究成果として、著作1の本体である「再発見!鎌倉の中世」展を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも記述したとおり、当初達成目標として設定した4点、1.中世前期(12世紀半ばから14世紀)に受容された宋元文物を史料的に把握する、2.特に政権がおかれた鎌倉地域でどのように記録されてきたかを明らかにする、3.伝世文物、出土遺物の両面から輸入された文物の実体を把握する、4.諸史料に現れる「唐物」と実体との比較検討をおこなう、のうち、平成24年度は1と3について重点的に研究を進めた。 しかし、平成24年度の成果還元事業として、唐物研究の最前線の研究成果を明らかにする展示を実施し、資料集として、五味文彦、古川元也、西岡芳文ほか共編著『世界遺産登録推進 三館連携特別展 武家の古都・鎌倉』(神奈川県立歴史博物館、pp.1-304、10月)を制作したため、研究の進行全体に十分にエフォートを果たすことが出来ず、計画全体の進行としてはやや遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では鎌倉地域に関係して残された寺院什物帳(文物台帳)にみられる請来遺品の完全把握と史料論的検討、大陸から請来された伝世文物、出土遺物の実体把握、およびその比較検討を行うが、具体的な実施方法は、1.寺院史料の調査研究2.美術・工芸・考古分野の遺品研究3.美術・工芸・考古分野の遺品研究(データ集積)からなっており、方法は、実査、撮影、調書作成が主体となる。 このうち、1,2については、これまでの応募者(研究代表者)の研究等で端緒が付けられているものもあり、調査の継続が必要なものについては随時実施してゆくこととしている。 基礎研究であるため、2年目、3年目の研究方針も大きな変更はない。1,2については金沢北条氏を介して鎌倉と関係を持つ金沢称名寺(真言律宗)の史料(「金沢文庫文書」)を中心として、同寺に伝来する文物および県外に所在する史料、文物の研究にあてる。また、3のデータ集積については、考古遺物の場合、参考遺品が量的に多いためデータ集積のための雇用を継続して行う。平成25年度は横浜市埋蔵文化財センターを中心とする遺物(金沢文庫境内遺跡他)および赤星コレクションに含まれる関連遺物の研究にあてる。 本年度の研究は、著作として1.五味文彦、古川元也、西岡芳文ほか共編著『世界遺産登録推進 三館連携特別展 武家の古都・鎌倉』(神奈川県立歴史博物館、pp.1-304、10月)、2.「日蓮聖人真蹟遺文の紙背文書」(『日蓮聖人と法華の至宝 第二巻日蓮聖人の真蹟遺文』所収論文、査読無、同朋舎メディアプラン、7月)、口頭報告として、1.「中世都市研究としての天文法華の乱」(興風談所研究会、2012年6月5日、岡山興風談所)、2.「仏日庵公物目録と記録される唐物」(貿易陶磁研究会、2012年9月29-30日、青山学院大学)を報告しているところであり、その知見をもとに一層の研究深化を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究調書の「研究計画・方法」で示したとおり、本研究の具体的な実施方法は、1.寺院史料の調査研究、2.美術・工芸・考古分野の遺品研究、3.美術・工芸・考古分野の遺品研究(データ集積)、からなっており、方法は、実査、撮影、調書作成が主体となる。そのため、経費の大半は実査、撮影に伴う旅費、謝金、備品代である。旅費は県内の調査は本務として博物館旅費で執行し、県外調査のみ計上している。寺院等に対する資料閲覧は料金として規定を設けていないところもあるため謝金対応とする。撮影については、すでに機材は用意されているが墨書等の判読に簡易赤外装置が有効なため初年度に備品費に計上した。この備品は平成24年度には執行できなかったので平成25年度に整備する予定である。また記憶媒体程度の消耗品費が必要となる。 上記3.については「考古遺物の場合は参考遺品が量的多いためデータ集積のための雇用を行う」としており、大学院程度の学生を雇用して補助員とする。そのための人権費を計上している。また、研究代表者のPCは本務所属にて用意されているので、今のところ問題はない。 本年度の研究では、基礎データの集積はある程度行うことが出来たが、そのデータ整理等のルーチンに属する作業が未達成であった。併せて、本年度実施予定の「金沢文庫文書」を中心とした、同寺に伝来する文物および県外に所在する史料、文物の研究と、上記両者のデータ集積については、とくに前者の考古遺物、参考遺品が量的に多いため、データ集積用に作業員雇用を継続して行い、賃金の適正な執行を図る。
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