2013 Fiscal Year Research-status Report
中世鎌倉地域における寺院什物帳(文物台帳)と請来遺品(唐物)の基礎的研究
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24520732
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
古川 元也 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 主任学芸員 (60332392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小井川 理 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 学芸員 (80589846)
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Keywords | 唐物 / 鎌倉 / 中世 / 史料 / 寺院 / 宋元 / 青磁 / 出土遺物 |
Research Abstract |
本研究では、研究期間として設定した3ヶ年のうちに、以下の目標を明らかにしようとした(交付申請書の「研究の目的」)。1.中世前期(12世紀半ばから14世紀)に受容された宋元文物を史料的に把握する。2.特に政権がおかれた鎌倉地域でどのように記録されてきたかを明らかにする。3.伝世文物、出土遺物の両面から輸入された文物の実体を把握する。4.諸史料に現れる「唐物」と実体との比較検討をおこなう。 その方法と具体的なテーマについては、鎌倉地域に関係して残された寺院什物帳(文物台帳)にみられる請来遺品の完全把握と史料論的検討、大陸から請来された伝世文物、出土遺物の実体把握、およびその比較検討を行うこととしたが、具体的な実施方法は、1.寺院史料の調査研究、2.美術・工芸・考古分野の遺品研究、3.美術・工芸・考古分野の遺品研究(データ集積)、からなっており、方法は、実査、撮影、調書作成が主体となる。 基礎研究であるため、平成25年度の研究実績も初年度(平成24年度)と大きな変更はないが、1,2については金沢北条氏を介して鎌倉と関係を持つ金沢称名寺(真言律宗)の史料(「金沢文庫文書」)を中心として、史料的な精査を文字史料で行い、同寺に伝来する文物、および県外に所在する史料、文物との比較研究を行った。 この調査に付随して、平成25年度に所属機関である神奈川県立歴史博物館において「こもんじょざんまい―鎌倉ゆかりの中世文書―」と題する特別展を開催し、金沢文庫保管称名寺所蔵文書を多数(約50点)展示した(総数270点)。この展示においては称名寺と唐物、茶などの嗜好品の受容をわかりやすく一般に向けて示しており、成果報告として写真図録を作成している。また、3のデータ集積については、平成24年度実施の遺物調査、展示のデータ化作業(赤星コレクション、八幡コレクション等)を継続して行ないデータの蓄積に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として設定した以下の3点の研究視角のうち、1.寺院史料の調査研究、2.美術・工芸・考古分野の遺品研究、3.美術・工芸・考古分野の遺品研究(データ集積)、以上のいずれについても、所属機関における展示「再発見!中世の鎌倉」(平成24年度)、「こもんじょざんまい―鎌倉ゆかりの中世文書―」(平成25年度)実施の関係から、計画的に付随して調査等を行うことができた。また、適切なエフォートを割くことが出来たこともあり、時間的にも特に問題は発生しなかった。 展示と調査の過程では、県埋蔵文化財課、横浜市教育委員会、鎌倉市教育委員会などの協力を得ることが出来ているので、計画遂行に特段の問題は発生せず、順調に研究が推移した。なお、平成24年度の、出土遺物に係わる事後調査については、若干の遅れが発生したが、平成25年度内にその遅滞は吸収することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究であるため、平成26年度の研究計画も初年度、二年度(平成24,25年度)と大きな変更はないが、平成26年度は最終年度であるため、報告書の刊行を予定している。そのため、極力上半期にはデータ整理を終え、報告書の制作に時間を使えるようにしてゆきたい。 これまでのところ、文献史料的なデータが予想以上に大量に収集できているため、研究成果として文献史料と、請来文物資料の両面から総合的に報告書に盛り込むことを再検討し、場合によっては本研究の核となる文献史料編を特化して報告することも考えている。 報告書の見通しは、本研究で行ったモノ資料研究、報告、執筆された論文などを、特に関連を持つものに特化することで、研究成果の還元を史料データに重点化し、基礎研究としての有効性を高めることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.データ解析、読解、入力の補助作業員として従事してもらった大学院生に対する謝金が、人員の日程的都合により2日分年度内に執行できなくなった。 2.資料入手のための費用が、資料閲覧先により便宜を与えられたため未執行となった。 以上の二点により、若干の未執行残額が発生した。 翌年度分の執行計画としては、未執行分を加えて、より充実した資料収集および、データ集積を行い、充実した報告書の作成に集中する。
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