2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520736
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箱石 大 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (60251477)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 日本史 / 近現代史 / 史料学 / 戊辰戦争 / 明治維新 |
Research Abstract |
本研究は、戊辰戦争研究のための史料学の構築を目指し、(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書、(2)戊辰戦争に参加した諸藩文書、といった戊辰戦争に関する基本的な史料群を調査・研究の対象とするとともに、(3)海外所在の戊辰戦争関係史料をも収集・分析することを目的としている。 (1)については、石田七奈子氏(総合研究大学院大学)の協力を得て、現存する維新政府文書の中核である東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録作成及びその分析を進めた。本年度は、作成済み目録データの修正が1025件、新規の目録データ作成が1210件完了し、史料群の構造を解明する手掛かりが得られつつある。 (2)については、金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵加越能文庫の加賀藩戊辰戦争関係史料を調査・撮影した。その結果、前田家編輯方が編纂した「加賀藩北越軍事輯録」が、後年の編纂物とはいえ、戊辰北越戦線における加賀藩全体の動きを網羅的かつ体系的に把握することができる基本史料であることを確認できた。さらに、加賀(金沢)藩が明治政府に提出した戦争届書などの書類控えや、諸隊単位の戦史編纂物である「小川隊北越出兵録」・「蓑輪隊北越出兵録」なども調査・撮影した。これらの史料は、旧藩大名家で行なわれた戊辰戦争関係の編纂事業を考察する上でも重要な素材となり得る。 (3)については、ペーター・パンツァー氏(ボン大学名誉教授)と宮田奈々氏(オーストリア学士院近現代史研究所研究員)の協力を得て、オーストリア国立文書館所蔵文書を調査した。パンツァー氏の研究により、戊辰戦争終結以前に本国を出発したオーストリア・ハンガリー帝国使節団は、未だ戦争の帰趨が判明しないため、将軍宛・天皇宛・大名または公卿宛の3通の信任状を持参して来日したことが明らかにされているが、今回はその他の付属史料も含めて調査し、デジタル画像で収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、現存する維新政府文書の中核である東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録作成及びその分析が、研究協力者の助力により進展した。本年度末までに終了した目録データの新規作成及び修正の件数は2235件に留まってはいるが、次年度以降における目録データ作成の方針をほぼ確定することができた点は着実な成果である。 (2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究については、金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵加越能文庫の加賀藩戊辰戦争関係史料のうち、加賀(金沢)藩が政府に提出した戦争届書の控えなどを調査・撮影し、また、旧藩大名家における戊辰戦争の記録編纂関係史料の収集・分析に関しても、同じく加越能文庫の「加賀藩北越軍事輯録」など、旧加賀藩主前田家による編纂事業を考察する手掛かりが得られた。これは、次年度以降の研究に繋がる重要な成果である。ただし、加賀藩戊辰戦争関係史料の分析に予想以上の労力が費やされたため、本年度の鳥取藩関係史料の調査は見送らざるを得なかった。 (3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析については、今回ドイツ所在史料の調査・収集は実施できなかったものの、プロイセンと同じドイツ語圏の国であるオーストリアの関連史料を収集することができた。これは、当初想定していなかった成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」に、依然として相当数の未整理・目録データ未作成史料が残されているので、次年度は、史料調査補助謝金による作業を週1日から週2日に増やし、同史料の整理・目録データ作成をより一層促進させる。 (2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究については、編纂物を中核として予想以上に充実している加賀藩戊辰戦争関係史料に調査・研究の焦点を絞り込む。 (3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析については、ドイツ所在史料のみならず、同じドイツ語圏のオーストリア所在史料についても収集・分析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、経費に関わる大きな変更はなかったが、(2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究においては、加賀藩戊辰戦争関係史料の分析に予想以上の労力が費やされたため、本年度は鳥取藩関係史料の調査を見送ったこと、さらに、(3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析においては、当初計画していたドイツ所在史料の調査を、他の研究費によるオーストリア所在史料の調査に振り替えたことなどにより、国内・外国旅費に残額が発生し、当該助成金が生じてしまった。 したがって、次年度は、翌年度分として請求した助成金と上記の残額を合算して使用することになるが、「今後の推進方策」で述べたように、「復古記原史料」の整理・目録データ作成をより一層促進させるため、史料調査補助謝金を増額することとし、この措置に伴い、旅費としての使用は可能な限り節約した計画に変更する。
|
Research Products
(2 results)