2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 史料学 / 戊辰戦争 / 明治維新 |
Research Abstract |
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、昨年度に引き続き、研究協力者の石田七奈子氏の助力を得て、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録データ作成及びその分析を進めた。本年度は、作成済み目録データの修正3848件、新規の目録データ作成4742件を完了させ、次年度中には作業が完了した目録データから順次公開することが可能となった。なお、分析を進めた結果、「復古記原史料」は、維新政府の弁事という役職に蓄積された文書群である可能性が高くなった。 一方、国立公文書館所蔵文書の調査によって、「雑種公文」の多くと、「記録材料」・「職務進退」・「上書建白」の一部が、元来は「復古記原史料」と一体のものであった可能性が高いことが判明した。また、防衛省防衛研究所所蔵の「軍務官雑」が、陸軍省旧蔵記録の一部であり、戊辰戦争期における維新政府の中央軍事官庁に蓄積された記録原本であることなども判明した。 (2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究については、信州大学人文学部日本史研究室所蔵の「御用廻状留」という史料を調査・撮影した。これは、戊辰戦争期に信州諸藩の触頭となった松代藩の京都在番藩士による記録である。このほかにも、現存する松代藩関係史料には、昨年度調査した加賀藩史料と同様、戊辰戦争関係の編纂事業に関する史料が豊富なうえ、戊辰戦争期の同時代史料も数多く残されていることを確認した。 (3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析については、研究協力者のペーター・パンツァー氏と宮田奈々氏の助力を得て、オーストリアのウィーン楽友協会資料館に所蔵される、戊辰戦争期のはやり唄「トコトンヤレ節」の楽譜を調査・収集した。これは、ハインリヒ・フォン・ボクレットが1888年に出版した楽譜集に収録されたものであり、今回はヨハネス・ブラームス旧蔵本などをデジタル画像で収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、現存する戊辰戦争期維新政府文書の中核である東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録データ作成及びその分析が、昨年度に引き続き研究協力者の助力により進展した。これによって、次年度以降における目録データの順次公開が可能となったことは着実な成果である。 さらに、本年度は、国立公文書館と防衛省防衛研究所の所蔵文書の調査を行なった結果、これらの文書群が「復古記原史料」と極めて密接な関係にある事実を明らかにできたことが大きな成果である。今後、戊辰戦争期における維新政府の中央官庁文書の全体像に迫ることが期待される。 (2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究については、本年度の調査により、現存する松代藩関係史料には、昨年度調査・研究を実施した加賀藩史料と同様、戊辰戦争関係の編纂事業に関する史料群とともに、戦争届書など戊辰戦争期の同時代史料も比較的多く残されていることが確認できたことから、次年度は加賀藩・鳥取藩史料に松代藩史料も併せて、戊辰戦争関係史料の生成と伝来といった問題を比較検討することが可能な状況となった。 (3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析については、ドイツのベルリンにあるプロイセン枢密文書館・ドイツ外務省政治文書館・ベルリン国立図書館を訪問して所蔵史料情報の調査を行なったが、期待する戊辰戦争関係史料は発見できなかった。しかしながら、オーストリアでは、研究協力者の助力を得て、ウィーン楽友協会資料館所蔵の戊辰戦争関係史料(トコトンヤレ節の楽譜)を収集するという成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究については、これまで着実に進展してきた史料調査補助謝金による東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理及び目録データ作成の作業を、次年度も可能な限り継続して推進する。 (2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究については、加賀藩・鳥取藩史料との比較検討のため、戊辰戦争関係の編纂事業に関する史料と、戦争届書など戊辰戦争期の同時代史料が充実していることを確認した松代藩関係史料の調査・研究も可能な限り進める。 (3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析については、引き続き史料の所在情報の収集に努め、可能な限り関係史料の調査・研究を進める。 なお、次年度は本研究の最終年度となるため、戊辰戦争研究のための史料学の構築に寄与すべく、調査・研究の対象とした文書群に関する解題及び個別論考を執筆・公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、(1)中央官庁及び各総督府文書からなる維新政府文書の調査・研究について、史料調査補助謝金による「復古記原史料」の整理及び目録データ作成の作業をより一層促進させるべく、史料調査補助謝金を増額する代わりに、調査旅費としての研究費使用を可能な限り節約する計画に変更した。このため、極力旅費を節約した調査の実施に努めたことにより、図らずも旅費分の研究費に残額が生じる結果となってしまった。 本年度は週2日とした史料調査補助謝金による作業を、次年度は当初計画通りの週1日に戻すことで同謝金を減額し、その代わりに、次年度の研究計画を遂行するうえで必要かつ十分な額の調査旅費等を計上することによって、(2)戊辰戦争に参加した諸藩文書の調査・研究、及び(3)海外所在戊辰戦争関係史料の収集・分析を促進させることにする。
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Research Products
(1 results)