2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520744
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
荒川 章二 静岡大学, 情報学部, 教授 (30202732)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軍都 |
Research Abstract |
本研究は、首都東京の「軍都」としての歴史的性格(明治・大正期)を明らかにすることを目的としている。東京を中心とする関東地域(首都圏)には、陸軍省や参謀本部、軍関係教育機関のほか、軍工廠、そして部隊としては、近衛師団関係連隊、第一師団関係部隊が駐屯し、日常的な訓練及び戦時の出動に対応していた。「帝都」は巨大な「軍都」として明治前半期に形成され始め、明治後半から大正期に定着した。 初年度である平成24年度は、出張調査が制約される中で、市民の日常生活や意識形成と最も深く係る部隊(近衛師団・第一師団)の日常活動や部隊の実情・課題が読み取れる部隊からの報告書の点検に力点を置いた。 具体的には、防衛省防衛研究所史料閲覧室の公開資料のうち、大分類「中央」のなかの部隊歴史関係(師団、連隊)、および大分類「文庫」のなかの、千代田文庫からの関係資料の拾い出しと内容の確認である。特に後者は、明治・大正期の戦役中の各部隊からの報告や検閲結果、上奏・内奏文書、連隊区司令部報告、野外演習報告書、および演習に係る図面等を多く含み、一次資料として非常に有益である。また、靖国偕行文庫については、所蔵史料のチェック、および偕行社記事の索引を利用して関連記事の内容を確認した。今年の計画であった陸軍省「大日記」類の検索・収集作業は未着手におわったが、これらの史料をあわせて読み込んでいくことで、首都東京におかれた陸軍部隊の日常的な存在形態とその意味について迫っていけると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の達成目標は、第1に、部隊史や自治体史など地域史等の関係文献の収集、第2に、アジア歴史資料センターのデジタルアーカイブズ資料の検索と関連資料の収集、第3に、防衛研究所及び靖国偕行文庫の資料収集を進めることであった。 このうち現実に成果が上がったのは、第3の課題部分である。この点に関しては、研究実績の概要に記したように、特に千代田文庫資料の検索において期待した成果が上がった。しかし、第2課題に関しては、時間の関係で取り組めなかった。時間の関係とは、学部の管理職に就任(再任)していたことから行政上の仕事に労力を割かれ、計画課題提出時に期待したエフォートを確保できなかったことによる。加えて、年度末は、次年度からの職場の移動準備という新しい条件が重なり、研究時間の確保がさらに困難となった。 第3の課題は、主に文献購入による収集であるが、これについても、職場の移動のため、購入した文献を次期の職場の持ち出すことが難しいことが判明したため、購入に関する作業を中止せざるをえなかった。これまで、購入してきた部隊史や関連地域の自治体史のうち、この10年程度の間に、公費や科研費で購入した文献はほとんど前の職場の図書館に戻さざるをえなかったため、これらの図書に関しては、再度の収集を含む検討が必要となっている。 ただし、第2、第3の課題に関しては、H25年度からの職場移動により研究時間や文献調査の研究環境が大幅に変化=改善したため、H25年度中に十分に挽回可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、第1に、昨年度課題のうち時間的に取り組めなかったアジア歴史資料センターのデジタル資料の検索・収集、および防衛研究所の原資料の継続調査を前半期(8月まで)に集中的に行う。静岡県から関東への職場の移動により、この研究課題に関する調査は時間的にははるかに容易になり、集中的な調査とコンスタントな所蔵施設調査をあわせて、比較的短期に、十分な調査時間を確保できる見通しである。 第2に、当初の25年度計画通り、東京都公文書館、千葉県文書館などの兵事関係資料を行い、あわせて、前年度中断した部隊史等の基本文献の確認、収集を進める。この作業は、8月末から9月実施を予定している。 第3に、年度後半から、明治大正期の東京で発刊されていた地域新聞から、地域に係る兵事関係記事を拾い出す作業をはじめる。当初計画では、平成26、27年度に地域新聞の検索を予定していたが、この課題の全体像を明確化するには、新聞検索作業を早める必要があるため、実施時期を繰り上げる。この作業は26年度以降も継続することになるが復刻版等があり、検索が容易な新聞から取りかかる。 以上の作業を通じて、「軍都としての帝都東京」という大きな課題のうち、さしあたり、近衛、および第1師団に限定して、首都の部隊の形成・展開過程を中間的まとめを行い、翌年度中の論文化(研究ノートレベル)を目ざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画提出時の平成25年度計画では、物件費40万年、旅費25万円、その他25万円、計90万円であり、24年度残額は約45万円である。平成25年度計画では、これらを合計して、研究費の使用計画を組み替えたい。 物件費は、当初の24年度計画では、ほとんど文献購入(明治大正期の出版物や地図など)に充てる予定であったが、先述のように職場の移動にからんで図書の持ち出しが難しいため、平成25年度に予定していたコンピュータ更新などの費用や周辺機器・消耗品の購入に切り替えた。こうした計画変更の事情から、今年度物件費はほとんど文献購入に充てる予定であるが、平成24年度の文献購入予定額と同額とし、10万円を増額し、50万円を充てる。 旅費は、職場が関東に移動した関係で、調査出張費用をおさえることが可能となったので、10万円減額して15万円とする。関東一円への調査旅費と研究会用の出席旅費である。 こうすると、残額が70万円ほどになるが、これをほぼ全て複写費用(「その他」)に充てることにしたい。防衛研究所資料の複写は、業者委託のため非常に単価が高く(1カット100円程度)、これだけ計上してもこれから検索する複写費の想定額から不足すると見積もられるためである。当初計画でも、平成24年度と25年度をあわせて55万円ほどの複写費(「その他」分)を見積もっていたが、調査旅費の減額できた分を上乗せしてできるだけ多額の複写費を確保したい。また、新聞検索を今年度からはじめるので、この分のコピー代も上乗せする必要がある。当初計画では、平成26年・27年に予定した新聞検索の山場に合計で75万円の「その他」費用を計上したのだが、こうした使用計画に現れているように、本科研計画では、十分な複写費用の確保が経費使用計画の中で非常に重要な意味をもっていることを強調しておきたい。
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Research Products
(3 results)