2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520744
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
荒川 章二 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30202732)
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Keywords | 軍都 / 東京 / 近衛師団 / 第一師団 |
Research Abstract |
4年計画のうち、2年目にあたる本年度において、本研究を達成するために必要な作業目標としたのは,大きく分けて①防衛省防衛研究所資料閲覧室での資料調査、②靖国神社靖国偕行文庫の文献調査、③アジア歴史資料センターのデジタル・アーカイブでの陸軍省大日記関係調査の資料調査の三点とした。 ①の防衛省防衛研究所資料閲覧室の資料調査のうち、千代田文庫資料については、約200冊の綴の内容を確認し、そのうち100冊余について、近衛関係部隊及び第一師団関係部隊に関し、部隊規律の現状や演習結果の状況、徴兵の状況などを考察することができる検閲報告文書を収集、複写した。この結果、両部隊に関して、一部欠落がありつつも、明治10年代前半から明治末までの検閲報告を揃えることができ、近衛と第一師団を比較しつつ、長期的に検討することによって、上奏文という限界はあるものの、下記に記す部隊史関係では伺えない時期毎(数年から10年程度の単位)の部隊の変化(問題点や部隊建設の課題)に接近することが可能になった。 さらに、防衛研究所では、数十点の部隊歴史関係綴の調査を行った。複写不可能なものがほとんどで、筆写が必要なものは、来年度の詳細調査にまわさざるを得なかったが、とりあえずは②の靖国偕行文庫の調査で、大正~昭和初期に刊行された主要な聯隊史、大隊歴史など基本文献をそろえることができた。戦後刊行された部隊史は、明治大正期の記述が薄いものが多いが、これらの文献収集により、部隊史の基本骨格を把握することが可能になったと考えられる。 ③の調査課題に関しては、明治後半から大正期までの綴の内容チェックを行った。首都の部隊関係資料では、編制関係の外、演習関係や軍紀に関わる文書、徴兵・徴発関係の文書を確認したが、複写は未了であり、分析は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は職場の行政業務が過多のため計画どおりの研究を進めることができなかったが、本年度は、「研究実績の概要」に記した通り、資料の収集面でその遅れを回復することができた。特に、前年の予備調査で主要な資料リストを作成しておいた防衛研究所所蔵千代田資料の収集が完了したこと、および首都関係部隊史の収集がほぼ完了したことで、明治初期の首都の部隊の形成期から明治末までの時期に関しては、部隊の状況・課題・演習状況・徴兵状況など基本的事項を時系列的に追及することが可能となった。 あわせて、年度末に東京都内の戦後刊行の区史、および東京府時代の区史、千葉の軍郷関係の自治体史の検索を行い、陸軍文書と自治体史側の掲載資料、自治体史収集の軍関係公文書類との突き合わせを試みた。これにより、当該時期の東京府内の軍事化の地域差、特質などを確認することができ、これらの作業を総合して、当初計画で目標とした平成26年度中の中間まとめ(論文発表)の目処がついた。現在、6月中を目処に原稿化の作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、①中間成果のまとめとその成果の公表、②アジア歴史資料センターのデジタル・アーカイブでの陸軍省大日記関係調査の継続、③東京都公文書館・千葉県文書館・埼玉県立文書館・神奈川県立公文書館など各県文書館所蔵の兵事関係文書(明治・大正期)の収集、④東京を中心とした新聞、及び『官報』からの記事検索を行う。 ①は本年度第一四半期のうちに原稿を完成させ、本年度中の発表をめざす。③は東京以外は該当する『県史』叙述を参考に、所蔵資料の基本的な把握と重要文書の複写を年央までに完了したい。しかし、東京関係の資料は『都史資料集成』や各区自治体史などから判断して大量にある事が確認されるため、本年度末ないし来年度までの継続作業となることも予想される。 ②は膨大な資料群につき、『陸軍省大日記』の検索を目標とする。④は明治初期から復刻版が刊行されている『東京日日』から検索を始め、『毎日新聞』、『都新聞』などへ可能な限り検索作業を広げていく。ただし、④は対象資料の多さから判断して時期を限定するにしても、次年度までの継続作業となる見込みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度繰り越し経費を含む総額135万円を、書籍など物品費50万円、旅費15万円、その他複写費など70万円と分けて執行する旨計画したが、複写予定の資料が複写不可(こんにゃく版、青焼き、その他保存状態の関係)と判明したものが予想以上に多かったため、40万円ほどにとどまり、その差額を旅費分の一部と合わせて関連文献などの文献購入費にまわした。計画に対する旅費執行の少なさは、今年度は防衛研究所など東京関係の資料調査に集中したため、東京近郊以外の他地域への調査旅費が嵩まず、このため旅費を文献・地図購入に回すことを予定したが、年度末の購入手続きが遅延し執行がかなわなかった。この結果、10万円ほどの剰余が生じたものである。 計画提出時の当初計画では、物品費20万円、旅費30万円、その他(主として資料複写費)40万円、計90万円であったが、繰り越し含め100万円のうち、主として文献・地図類購入にあてる物品費50万円とし、旅費を20万円に減額(静岡県から首都圏に職場が移動したため)、資料複写費などその他費用を30万円と仕分けして執行する計画とする。旅費は研究会出張および東京の部隊が派遣された地域(九州など)の調査用に執行する予定である。その他費用は、複写費25万円、消耗品費5万円を予定している。
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Research Products
(3 results)