2012 Fiscal Year Research-status Report
1891年濃尾震災の被害・救済・復興過程の歴史学的研究
Project/Area Number |
24520745
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽賀 祥二 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (30127120)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 濃尾震災 / 災害記念碑 / 慰霊・供養 / 被災者救済 / 災害復興 |
Research Abstract |
(1)本年度は岐阜市歴史資料館に寄託されている「震災紀念堂資料」のうち重要資料の撮影を実施し、その7割程度の撮影を終了し、DVD化して、その内容の分析を開始した。 (2)また濃尾震災に関する資料収集を進め、岐阜県図書館・岐阜大学地域資料センターなど岐阜県内の史料所在機関において、関連資料を抽出し、撮影を実施した。特に岐阜大学地域資料センター所蔵の『高富丹羽家文書』は最も震災の被害が大きかった地域の一つである高富村の史料であり、当主の日記や震災復興関係の史料を発掘できたことは成果の一つであった。またこの他にも『高屋村古田家文書』などにも復興土木工事関係の史料があり、震源地近くでの復興過程を再構成するための好材料を得ることができた。 (3)愛知県内では、愛知県公文書館において丹羽郡・西春日井郡などの郡役所文書の中に震災関係史料を調査し、また震災地から比較的離れた西加茂郡(現豊田市域)における区有文書などを調査し、この地域の被害状況、救済活動について貴重な史料を発掘することができた。 (4)新聞史料については、『金城新報』・『新愛知』・『岐阜日日新聞』の地元の新聞、東京の『東京朝日新聞』、京都の『日出新聞』の記事検索・複写を行い、地元と東京・京都の報道内容について比較して検討する材料を確保した。 (5)震災紀念堂における祥月命日(10月28日)に行われたシンポジウムに「震災紀念堂と天野若円」と題した講演を行い、また関係者と今後の紀念堂保存・公開について懇談した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、濃尾震災の被害・救済・復興について総合的な検討を行うために、関連する資料を網羅的に収集し、そのうちから基礎的な史料を抽出して、『濃尾震災基本資料集』を編集することにあるが、24年度には犠牲者追悼に関わる最も重要な史料群である『震災紀念堂資料』の7割ほどの撮影、データベース化を実現することができ、25年度にはその作業を終え、史料集の中心的史料とする基礎を作ることができた。また、岐阜県内で最も被害の甚だしかった岐阜市北部地域の在地史料を調査・撮影することができ、25年度にもこの地域での史料発掘のきっかけを作ることができたことも成果の一つである。愛知県内では新聞史料の検索・撮影もほぼ行うことができ、併せて東京と京都の新聞の調査を5割ほど実施できており、震災報道の内容を知りうる作業となった。愛知県内の東部地域の史料調査においては、被害の程度や震災地への救援活動が深く根付いていたことを知ることができた。震源から比較的離れた地域での濃尾地震の影響を測定する必要性を強く感ずることになった。また震災紀念堂については、震災紀念堂保存機構の手で濃尾震災を広く周知することによる防災教育への貢献を目的とした活動が行われているが、それに関係する一員として今後の史料保存・公開、防災教育への方法について議論を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)24年度の積み残した『震災紀念堂資料』のうち重要史料の撮影、データベース化の作業を終えて、その内容の検討を本格的に始めるとともに、最も重要だと思われる史料の翻刻を行い、25年10月28日の命日に刊行する予定の紀念堂紹介冊子に掲載したい。 (2)震災紀念堂はこれまでほとんど知られておらず、ひそかに関係者によって保護され、慰霊活動が絶えることなく行われてきたが、25年度はその歴史の概要と関係者の寄稿文をもとに冊子を作成して、ひろく社会にその存在の重要性を知ってもらう事業に取り組みたい。その一環として、10月28日には紀念堂シンポジウムを関係者と行い、これまでの調査の成果をその場で発表したい。 (3)これまで収集した史料を目録化して、濃尾震災関係史料集を編集する基礎作業を行う。その際、いまだ手つかずの岐阜・愛知両県以外の諸県、三重・福井・静岡・滋賀といった諸県における濃尾地震の被害に関する史料を収集する作業を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)『震災紀念堂資料』の撮影とデータベース化の費用。 (2)震災紀念堂におけるシンポジウムの開催とその時に配布する『震災紀念堂の歴史と現在』(仮題)という冊子を発刊する費用。 (3)岐阜・愛知両県内の図書館・資料館における史料調査と撮影のための費用。 (4)岐阜・愛知両県以外の諸県における史料所在調査のための費用。
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