2013 Fiscal Year Research-status Report
1891年濃尾震災の被害・救済・復興過程の歴史学的研究
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24520745
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽賀 祥二 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (30127120)
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Keywords | 濃尾地震 / 震災紀念堂 / 災害復興 / 災害紀念碑 / 慰霊・追悼 / 近代日本災害史 |
Research Abstract |
本年度は、岐阜市に所在する『濃尾震災紀念堂資料』のうち、未撮影であった史料の撮影を実施し、主要史料のほとんどの撮影を完了した。それらの紙焼き冊子を作成したうえで、「死亡人台帳」・本尊寄附関係史料・年忌法要関係など重要史料の翻刻作業に取り組み、刊行をを予定している『震災紀念堂の概要』に掲載する準備を進めた。この『震災紀念堂の概要』は広く紀念堂の歴史と意義を紹介する試みであり、紀念堂の関係者の随筆・座談会や創建から現在に至る略史を盛り込んだものである。この刊行によってこれまでの関係者の紀念堂維持・管理の努力を明らかにするととともに、地震災害に対する社会的な啓発を意図するものである。また昨年度と同様に、岐阜県歴史資料館、豊田市史編さん室、愛知県公文書館などに所在する濃尾震災関係史料の調査を行った。とくに豊田市史編さん室では旧西加茂郡・東加茂郡内の町村役場文書・区有文書の整理作業を実施しており、それらの中に被害状況・復旧過程、そして義援活動などに関する新出史料を確認し、撮影することができた。三河地域は愛知県内では比較的被害は少ない地域であり、史料調査も実施されず、空白地域であったが、ここで史料を得たことは愛知県内の震災状況を把握する上できわめて有益である。また、震災紀念堂における10月28日の年忌法要後に行われた記念講演会と、中部歴史地震懇話会において紀念堂の歴史と現状について講演・研究発表を行った。また名古屋大学大学文書資料室が開講している授業「名大の歴史を学ぶ」において、濃尾震災の際、名古屋大学の前身校である愛知医学校・病院が実施した医療活動などについて講義を行い、地域の災害史を知ってもらい、防災・減災へ関心を持つことの重要性を新入生に説くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題を果たすためのもっとも重要な史料である『震災紀念堂資料』の撮影・複製史料作成を終え、また岐阜・愛知両県での地域史料の調査作業もかなり進展し、また仏教団体発刊雑誌(『明教新誌』)や新聞史料の収集もほぼ終えて、それら諸史料の分析を本格化させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には『震災紀念堂の概要』の編集作業を進め、10月28日に行われる年忌法要の際に参加者に配付できるようにする。これによってはじめて紀念堂の存在を周知でき、この後震災関係史料や犠牲者遺族を見つけ出すきっかけとしたい。また震災犠牲者の名簿作成を通じて、被害地の特徴や犠牲者の様相を明らかにしたい。濃尾震災についての文献リストや紀念碑・供養塔の所在地リストを作成しており、これによって震災研究を推進する材料を提供する。さらに成果をまとめるため「濃尾震災と慰霊」に関する論文をまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
震災紀念堂資料のマイクロ資料の紙焼き複写の作業が一部分遅れ、納品までに至らなかったため。 上記の複写費用に充てる。
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