2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520747
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村田 路人 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40144414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 治水 / 開発 / 堤外地政策 / 国役普請 / 貞享期畿内河川整備事業 / 享保改革 / 吉宗政権 / 綱吉政権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、享保改革期における幕府の開発政策と治水政策について、堤外地(堤防と堤防とに挟まれた地)政策という、これまでほとんど注目されることのなかった新たな観点から、それぞれの政策内容と両者の相互関係を明らかにするとともに、それが享保改革政治全体の中にどのように位置づけられるのかを検討しようとしたものである。研究期間中の研究成果は、以下の通りである。 第一に、貞享期(綱吉政権期)から享保期(吉宗政権期)までの上方における幕府の堤外地政策の流れを整理し、享保7年(1722)に、堤外地の開発抑制により水害の芽をできるだけ事前に摘み取ろうとするそれまでの考え方から、強固な堤防を築くことにより、堤外地の積極的開発に伴う水害の危険性増大という問題を解決しようとする考え方に転換したことを明らかにした。 第二に、堤外地政策の転換(堤外地の積極的開発)と抱き合わせの形で採用された畿内国役普請制度を、国役の変質という観点から位置づけ直したことである。享保改革期における国家統治権強化を背景に、幕府は享保5~6年に国役の性格を変化させ、大規模普請に対応可能な治水体制を作り上げたのである。 第三に、綱吉政権も吉宗政権も、ともに国家統治権の強化を目指したが、前者が、自身の身を切りながら水害防止のための体制を構築しようとしたのに対し、後者は、水害の危険性の増大をやむを得ないものとして、自身の利益追求を優先させたことを明らかにしたことである。 本研究の意義は、①享保改革期における開発政策と治水政策の歴史的位置が明確になったこと、②近世の開発と治水について、新たな分析方法を示したこと、③開発・治水の側面から、吉宗政権の性格が明らかになったこと、の3点である。なお、最終年度は、上記の諸成果を論文にまとめることに専念した。
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Research Products
(2 results)