2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520768
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
櫻井 良樹 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (90211268)
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Keywords | 支那駐屯軍 / 張作霖 / 鈴木一馬 |
Research Abstract |
本年度も基礎史料の収集につとめた。国内における日本語文献調査は、外務省外交史料館を中心に行い、適宜、国会図書館憲政資料室、早稲田大学図書館、日比谷図書文化館に出向いて行った。このうち外交史料館においては、居留民団民会関係、外国駐在外交団関係、義勇隊関係、支那内乱関係、天津暴動関係を中心に調査した。日比谷図書文化館では、「内田嘉吉文庫」で貴重な文献(鈴木一馬司令官の回想録など)を確認・収集、翻刻・公表した。科学研究費を用いた国内出張は、行わなかったが、別調査で訪問した高知、鹿児島、福岡の各県立図書館において、それぞれの地域に駐屯した部隊の歴史文献から中国派遣隊記事を収集した。また奈良武次日記の未刊行分の点検を行うとともに、『日本外交文書』の昭和期I・II、「現代史資料」「続・現代史資料」に収められている史料と、昨年以来収集した資料の照合作業を行った。 海外調査では、昨年一度訪問して確認したメリーランドNational Archives 2所蔵のアメリカの中国駐屯軍関係資料の調査を引き続いて行った。探していた1912年の派遣当初の文書を発見した。またワシントン中心部のNational Archives 1でも義和団事変以後の北京公使館護衛兵関係史料の所蔵を確認し、必要な箇所を撮影して収集した。 以上の史料収集の過程で、アメリカは、第一次世界大戦期に旧ドイツ権益の租界警備を引き受けたことにより、実質的に管理すべき租界を有することになったこと、そして1920年代以後は中国の内乱の激化により各国軍共に天津警備の重要性が高まっていること、しかし1930年12月の守備区域の廃止は、駐屯軍の国際共同性を引き下げ、唐山からの米軍撤退が日本軍の自由行動を高めるとともに、豊台からのイギリス軍の撤退が日中戦争の引き金になった側面をあることがわかった。 成果物としては論文2本を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究(具体的には史料調査が中心)は、ほぼ予定通りに進めることができた。本年度に計上していた当初の予算(設備備品費、海外旅費、国内旅費、その他コピー代、交通費)も、年度末までに順調に消化した。使途内訳もほぼ予定通りであった。 昨年度と今年度のワシントンNational Archives調査(平成26年度もしくは27年度に予定していたものを一年早めたもの)によって、アメリカ軍の動向が判明する史料収集をひとまず終えることができた。また国内における史料調査においては、外務省外交史料館についての当面の作業は終了した。昨年度のNational Archives調査によって国会図書館憲政資料室に所蔵されていることを確認した"The Military Intelligence Division Regional File Relating to China 1922-1944"なども見ることができた(余り重要なものはなかった)。部隊史の調査は、高知、鹿児島、福岡で行い、それぞれ有用な写真・文書などをコピーした。 ただしワシントンNational Archives 2所蔵資料として第一次世界大戦期のものが、まだ見つかっていないこと、National Archives 1の海軍関係のRG45は膨大なために手をつけることは難しいことがわかった。昨年度の実績報告書に記したイギリス軍関係調査は、次年度以後に計画することを考えている。 研究報告や成果の出版については、今年度中に収集した鈴木一馬の「駐支秘録」の史料紹介を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、国内史料所蔵機関での補充調査を行う。各地自衛隊史料館に残されている中国に派遣された部隊兵士の手記類などの調査と、関連資料の捜索を継続する。研究を著書としてまとめはじめる。年度中には、第一章「清国駐屯軍の成立」、第二章「辛亥革命の勃発」、第三章「第一次世界大戦期」、第四章「ワシントン会議と列国駐屯軍問題」くらいまで。この作業によって、周辺・関連情報をさらに調査する必要が生じてくる可能性が高いと考えられる。古書として流通している資料の収集にもつとめたい。 平成27年度は、本研究の最終年度にあたる。駐屯軍の創設から改組・消滅の時期の全部にわたる通史的著述をまとめ出版することを目的として、前年に続けて本の執筆を行う。第五章「中国ナショナリズムの昂揚と駐屯軍」、第六章「山東出兵と駐屯軍」、第七章「満洲事変と駐屯軍」、第八章「駐屯軍の大増強と廬溝橋事件への道」を予定している。なおフランス、ドイツ、ロシア、イタリア史料の残存と利用可能な環境の目途がつけば、さらに本研究を国際共同研究として発展させていく準備を行いたい。あるいは手をつけていないロンドンのNational Army Museumの調査を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ平成25年度に前倒し申請を行った後の予算修正計画通りの残額8426円である。 平成26年度研究費は、備品費25万円、旅費10万円、その他15万円を予定している。国内における交通費は、都内の資料館(外務省外交史料館や国会図書館憲政資料室など)に通うためのものと、自衛隊史料館に残されている中国に派遣された部隊兵士の手記類などの調査一回の予定である。その他は、おもにコピー代金。備品費は、関係図書・資料購入費である。なお本年度の研究進展状況によっては、備品・その他の支出を抑えて、平成27年度に支出を繰り越すことも考えたい。 平成27年度は、総額で20万円しかないので、おもに補充調査のための旅費として使用する。26年度予算を繰り越す場合には、国際共同研究として発展させていくための準備を行いたい。
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Research Products
(3 results)