2014 Fiscal Year Research-status Report
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24520768
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
櫻井 良樹 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (90211268)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 支那駐屯軍 / 天津 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は史料収集と平行して研究のまとめを開始した。国内史資料・文献調査は、地方の図書館と旧軍関係資料館で行った。たとえば図書館では、和歌山県立図書館『偉人日匹信亮』『和歌山歩兵六一聯隊写真集』、岐阜県立図書館『岐阜連隊略史』をコピーした。私的な旅行で立ち寄った福山市立中央図書館では、『北京駐屯七・七戦友会史』『福山聯隊史(中国編)』を見つけた。また久留米市立図書館では、久留米駐屯地広報資料館に資料を寄贈した加藤恒太氏の背景を調査することができた。旧軍関係では、青森駐屯地防衛館で山海関事件の戦闘詳報、札幌のつきさっぷ郷土資料館では、兵士の日記を発見した。 海外調査では、北京・天津の現地調査(費用は科研費以外を使用)とワシントンでの補充調査を行った。天津ではアスター・ホテルの博物館で天津の歴史を、静園(溥儀の故居)の天津事件の現場を訪ね、北京では段祺瑞政府旧址、盧溝橋、豊台駅を訪ねて、関係文献を購入した。3回目となるワシントン調査は、NARAⅡにおいてRG395のエントリー5974 Memorandaの3Boxと、写真室にある華北軍の写真を調査。また本館ではフィリピン軍関係の中に華北派遣軍の資料が混ざっていないかを確認し、司令部文書は失われていることを知る。ただし印刷された一般命令と特別命令に、若干の史料を得た。さらに議会図書館でも、館外からはアクセスできなかった写真資料を収集した。 以上の史料収集とまとめの作業過程で、1912年の鉄道保護協定が1920年代末まで継続する駐屯軍の協同軍事行動の基礎となるとともに、新たな行動の起点となっていることがわかった。いっぽう1920年代の中国内乱がアメリカ・イギリス両軍に大きなインパクトを与え、それが独自の行動を取るようになった背景にあり、ワシントン体制下の列国協調はかなり動揺していることもわかった。 成果物としては関係する単文を一つ、論文を一つ掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究(文献・史料調査および成果をまとめる作業が中心)は、ほぼ予定通りに進めることができた。本年度に計上していた当初の予算(設備備品費、国内旅費、その他コピー代、交通費)は、秋までにほぼ消化した。 研究報告として執筆している『華北駐屯日本軍』のためにアメリカのNational ArchivesとLibrary of Congressにて補充調査が必要となったため、本年度のその他に計上してあった費用残額と平成27年度(最終年度)に計上していた旅費予算から10万円を前倒してワシントン調査を行った。旧軍部隊史の調査は、青森、札幌、福山などで行い、特に福山市立図書館では、思いがけず日中戦争勃発時の兵隊たちの記録をまとめた東京では見つけられない資料にめぐりあった。つきさっぷ郷土資料館にあった山海関に派遣された兵士の1936年から1937年の日誌コピーは貴重なものであることがわかった。 研究成果をまとめる作業を開始し、成果報告予定の書籍の第1章「清国駐屯軍の創設(1898~1902)」、第2章「初期の駐屯軍(1902~1911)」、第3章「辛亥革命と駐屯軍(1911~1914)」、第4章「第一次世界大戦と駐屯軍(1914~1922)」を書き終えた。 研究報告や成果の出版については、支那駐屯軍の諜報活動について言及した論文を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
予算額も10万円とわずかなので、本年度は駐屯軍の創設から改組・消滅の時期の全部にわたる通史的著述をまとめ出版することを目的として研究することが中心となろう。したがって国内調査や海外調査は予定しない。これまでの3年間の調査活動によりフランス、ドイツ、ロシア、イタリア史料の残存と利用可能な環境の目途がつけば、さらに本研究を国際共同研究として発展させていく準備を、この年に行いたい。 前年に続けて本の執筆を行う。第5章「動揺する駐屯軍(1922~1927)」、第6章「第二次山東出兵・満洲事変と駐屯軍の変質(1928~1932)」、第7章「華北分離工作と駐屯軍の主役化(1933~1936)」、おわりに「廬溝橋事件」を予定している。 残された課題としては、豊台関係をさらに調べること、本研究では時期的に範囲外となるが、日本の駐屯軍の撤廃後も、英米などの駐屯軍は残存し、日本による天津封鎖事件なども起こったことから、その経緯について調べる必要がある。これに関しては、NARAⅡのRG84の天津領事館文書の1940年のファイルに、Withdrawel if Americans from the Far Eastという項目があり、天津封鎖の記録も残されていることがわかっている。
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Research Products
(3 results)