2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
服部 一隆 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20440175)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 / 天聖令 / 律令 / 大宝令 / データベース |
Research Abstract |
本研究では、天聖令を使用した日唐令比較によって、現在失われた大宝令の独自性を検討する。そのために、(1)唐令復原の関連史料および天聖令・大宝令復原に関する文献を収集して条文ごとにデータベース化する、(2)日本における独自規定に関する7世紀から8世紀までの単行法令および一次史料(出土文字資料・古文書)を収集・データ化する、(3)日唐令比較を実施して大宝令の独自部分を明らかにする、(4)天聖令残存部分について田令・賦役令を中心とした大宝令の独自性を明らかにし、その変遷を検討する、(5)天聖令が残存しない戸令の復原を実施し、その他の編目も併せて大宝令の独自性を解明し、7・8世紀における歴史的意義を明らかにする、という全体計画を作成している。 平成24年度は第1段階(基礎データの作成1)の作業を実施する(上記区分の(1)(2))。 (a)日唐令比較研究 日唐令関係文献については、「天聖令研究文献目録(第2版)」(『法史学研究会会報』14)および若手研究(B)「天聖令を使用した大宝令の復原研究」で収集したものに旧来の基本文献を増補し、PDF形式のデータとして整理した。また中国社会科学院(担当:牛来穎氏)との提携により天聖令研究文献目録を共同で作成(本科研では日本語文献担当)することになり、平成24年までのものを作成・交換した。 (b)日本史料研究 大宝令に関わる単行法令については、「単行法令史料目録」(『国立歴史民俗博物館研究報告』135)をデータ化した。一次史料については、最新の「戸籍木簡」などの出土文字資料収集と併せて、田図の調査を実施し、近年増加している賦役令関係の考古資料を収集した。 また、研究協力者とは3度の会合を持ち、各自が研究状況について報告し、進捗を確認した。その他本科研の成果報告として拙著『班田収授法の復原的研究』(吉川弘文館、2013年)を研究者に配布した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成24年度・25年度に、(1)唐令復原の関連史料および天聖令・大宝令復原に関する文献を収集して条文ごとにデータベース化する、(2)日本における独自規定に関する7世紀から8世紀までの単行法令および一次史料を収集・データ化するという作業計画である。 本年度は初年度ということもあり、研究環境の整備や文献目録の作成などの準備作業、日本令研究とくに戸令・田令・賦役令に関する最新資料の収集および調査を重視した。 (a)日唐令比較研究については、日唐令関係文献の収集を中心に実施した。「天聖令研究文献目録(第2版)」および「天聖令を使用した大宝令の復原研究」で収集したものに旧来の基本文献を増補し、PDF形式のデータとして整理した。また中国社会科学院(担当:牛来穎氏)との提携によって天聖令研究文献目録の作成を実施することになり、平成24年までのものを作成・交換した。ただし唐令復原史料は関連資料の収集に留まり、データ化は来年度となった。また、中国文献の現地収集については、中国社会科学院より詳細な文献目録の提供を受けたため、費用対効果を考えて次年度とした。 (b)日本史料研究のうち、大宝令に関わる単行法令については、「単行法令史料目録」(『国立歴史民俗博物館研究報告』135)をデータ化した。一次史料については、最新の出土文字資料収集と併せて、田図の調査を実施し、戸令・賦役令関係の考古資料を収集した。とくに大宰府近郊から発見された「戸籍木簡」を実見できたのは収穫であった。ただし大宝令に関わる単行法令の資料収集は進められなかった。 また当初の計画では、大学院生の謝金作業を実施する予定であったが、適当な人材を確保できなかった。そのため若干作業が遅れたが、自身でデータ化作業は実施した。研究計画は概ね実施できたが、全体の中では日本史料研究のうち単行法令のデータ化がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本年度に続き第1段階(基礎データの作成2)を進めることになっており、関連史料の収集とデータ化の大まかな完成が目標である。そして26年度前半にはデータベースの完成という計画となっている。本年度天聖令関係文献および大宝令関係文献のうち入手の容易なものについては複写・PDF化が概ね完成したので、次年度は、学外文献(国外も含む)の取り寄せおよび、唐令復原史料のデータ化と大宝令に関わる単行法令および関連文献の収集進め、PDF・テキストデータ化を進める。 学外文献については、国会図書館や明治大学図書館の学外取り寄せサービスを利用して、収集を進める。国外文献については、中国社会科学院に協力を仰ぎ、北京に出張して収集する。とくに中国では新刊書の刊行が盛んなので、見落としのないように気をつける。 (a)日唐令比較研究 唐令復原史料については、『唐令拾遺』『唐令拾遺補』『天一閣蔵明鈔本天聖令校証』などによって収集し、刊本・影印本の該当箇所をPDF形式のデータとして整理する。 (b)日本史料研究 大宝令に関わる単行法令については、「単行法令史料目録」および『続日本紀史料』を中心に8世紀の史料を収集し、『日本書紀』所収の詔勅類も併せて整理する。また8世紀の単行法令に関わる文献を収集する。一次史料については、まず田令に関わるものとして、木簡を中心とした田制関連の出土文字資料が記載された報告書の関連部分を複写し、および田図を中心とした律令公文(戸籍・計帳など)に関する古文書を刊本によって整理する。賦役令に関するものとして『評制下荷札木簡集成』(奈良文化財研究所)などによって近年の調・養(庸)木簡を収集・整理し、さらに負担の単位となった五十戸に関わる出土文字資料(木簡・墨書土器・文字瓦)を報告書から複写する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の直接経費は700,000円、前年度繰越金が72,454円あり、予算は計772,454円である。費目別には、消耗品費300,000円、旅費311,000円、謝金75,000円、その他86,454円とする。 消耗品の内訳は、日唐律令および単行法令関係の書籍(中国刊行の書籍、九条家本延喜式・続日本紀史料の続編など)の購入費が230,000万円、データ作成用ソフト(アドビ:イラストレーターなど)および公開用ソフト(ホームページビルダー)購入費が70,000円である。ただし新刊書籍や新発売のソフトおよび機器で本研究に有用なものがある場合は、臨機応変に対応する。 旅費は311,000円で、うち海外旅費(中国・北京文献収集)が130,000円、国内旅費が211,000円である。国内旅費は奈良2泊(木簡学会・古代官衙検討会における資料収集29,000円×2)、京都2泊(資料調査27,000円×2)、奈良2泊(資料調査29,000円×2)、神戸1泊(資料収集26,000円)、神奈川2泊(研究報告15,000円)の予定である。次年度は研究を一段と進める必要があり、各分野の専門家である研究協力者(三河雅弘・十川陽一両氏)との共同調査を計画している。 謝金75,000円は補助業務用(60時間分)である。資料収集やデータ化を依頼する。ただし本務を遂行できる大学院生が見当たらない場合は代表者本人が作業をする。 その他は文献複写費(国会図書館・他大からの取り寄せ等)、紙焼き写真頒布費(弘仁格抄)、通信費、近距離交通費、抜き刷り送付費などである。今年度は学外文献の取り寄せが多くなるので、文献複写費を多めに見積もっている。
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