2014 Fiscal Year Annual Research Report
タイ語プロパガンダ誌からみた戦時期日本の東南アジア関与とその変化
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24520776
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加納 寛 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30308712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 南進政策 / プロパガンダ / 東南アジア / タイ / 大東亜共栄圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今次研究の成果については、大きく2方面に分けられる。 戦時期の日本によるタイ語プロパガンダ誌の資料収集・分析については、国立国会図書館等における『カウパアプタワンオーク』全巻の閲覧・複写を実施し、記事および広告についてデータベースを作成した。さらに、タイ語プロパガンダ誌である『マハーミット』などの冊子や、タイ語記事を含む対外プロパガンダ誌である『太陽』・『フジンアジア』、同じく東南アジア向けのプロパガンダ誌である『ニッポン・フィリッピン』などの冊子を収集したり複写したりすることによって、日本がタイに対して展開したプロパガンダ誌を体系的に認識することができた。上記の『カウパアプタワンオーク』の記事・広告データベースについては、論文として公表した後にウェブサイトでも公開する予定である。 また、タイ側の反応については、タイ国立公文書館においてタイ政府宣伝局文書を中心に閲覧することにより、日本は映画や印刷物、写真展示を通じて、タイ人や華僑に対する積極的な宣伝活動を展開し、ある程度の成果を挙げたものの、その多くはタイ政府に無断で実施された一方的なものであり、タイ政府の日本不信・不満に結びつき、監視や消極的妨害といった反応を招いたことを明らかにすることができた。さらにこの文書によって、日本側のタイ向け宣伝活動は「下町族」の活動地域に集中しており、華僑以外のタイ人が多く居住していた地域に対しては宣伝活動がほとんど展開されておらず、一般のタイ人住民に対しては有効ではなかったこともわかった。 これらによって、日タイ両面の視点から、当時の日本によるタイに対するプロパガンダ誌の具体的な狙いと実際の結果について観察することができ、戦時期日本の対タイ関与について新しい視覚を提供することができた。
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