2012 Fiscal Year Research-status Report
異宗教の相剋により生じた社会現象の比較史的研究―古代仏教説話に見る伝統と革新
Project/Area Number |
24520779
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本郷 真紹 立命館大学, 文学部, 教授 (70202306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
毛利 憲一 平安女学院大学, 国際観光学部, 准教授 (00425026)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本霊異記 / 仏教史 / 宗教史 / 日本古代社会 |
Research Abstract |
本科研では神仏習合のあり方を中心に、日本古代社会における伝統的価値観・信仰と、外来宗教である仏教的な価値観・信仰との関係を考察し、仏教思想の伝播が社会に与えた影響を明らかにすることを目的としている。前科研費採択課題を発展的に引き継ぎ、仏教思想の伝播が社会に与えた影響とその歴史的意義を新たな観点から明らかにしたいと考える。 初年度となる平成24年度は、『日本霊異記』の検討を中心に、定期研究会を10回、合宿研究会を1回開催した。今年度は『日本霊異記』中巻を検討し、分担者・協力者による中巻本文の校訂と内容検討についての発表を行った。今年度中に中巻は全ての縁の詳細な検討を終えることができた。これと並行して、分担者の山本が中心となり、『日本霊異記』上巻注釈書の刊行準備を進めた。そのための検討会を7月以降15回程度開催し、出版元とも作業を進め、入稿原稿の準備を整えた。また調査旅行を1回、文献調査を2回行った。調査旅行では、磨崖仏など仏教信仰に由来する石造物が日本で最も多く残存し、また神仏習合の起点となった宇佐八幡(宇佐神宮)や、中央との文化的交流を豊かに伝える六郷満山の諸寺が所在している大分県豊後地方の古社寺を踏査した。文献調査のうち1回は、名古屋大学附属図書館を訪ね、同館が所蔵する小林文庫本「因縁集」の近世写本を実見した。もう1回は、本研究が進める『日本霊異記』注釈書作成の際、中・下巻の底本としている真福寺所蔵本の新たな断簡が発見され、それが名古屋市博物館で開催中の特別展「大須観音展」に出陳されたので、それを観覧した。このほか、奈良県を中心とする古代寺院・遺跡および『日本霊異記』故地の踏査を5回程度開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)日本霊異記の中巻の検討を進めた。中巻は奈良時代半以降の時代を説話の背景としており、本研究課題が目的としている「神仏習合」を中心とする、日本古代社会の宗教的特質の解明に関わる重要な問題を多くはらんでいる史料であった。詳細な注釈作業を行い、仏教額などの専門家も交えて検討を行うことで、古代仏教の特質等について、知見を深めることができた。 2)日本霊異記上巻注釈書の刊行準備の過程では、作業を通して、8世紀初頭までの日本仏教黎明期における神仏融合現象の前段階の状況について、認識を深めることができた。また刊行のための準備作業は確実に行うため、進捗が計画より遅れている部分があるが、その分、よりよい注釈書を作成できる見込みである。 3)調査旅行では上記のとおり大分県豊後地方の仏教関係の遺跡などを踏査したが、中国大陸・朝鮮半島との窓口に近い当該地方において、日本の仏教文化、神祇信仰は融合した姿を実見することができ、研究目的とする課題に大きな示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、研究計画に基づき、前年度の研究体制・組織で以下の作業を進める予定である。①『日本霊異記』下巻の検討を行う。そのための定期研究会をほぼ12回開催する。」②『日本霊異記』上巻の注釈書の刊行準備を進める。年度前半中に入稿のを完了し、厚生などの作業を経て、26年度初めの刊行を目指す。そのための検討会を随時開催する。 ③異宗教の相剋により生じた社会現象の比較史的研究を進め、その研究成果を定期研究会や外部の学会・研究会などで発表し、成果の公表に努める。④富山・長野で現地調査を行う。立山信仰に関わる寺社・遺跡等を踏査し、古代の山岳信仰および、それに関わって生起した神仏習合現象の実態等について認識を深めたい。このほか奈良県を中心に、前年度に引き続き、『日本霊異記』故地の踏査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も、代表者・分担者とも適正な研究費の執行に努める。以下の計画で研究費を執行する予定である。①研究を進める上で必要な史資料・文献、『日本霊異記』の校訂・注釈を進める上で必要な工具書類・関連文献・写真紙焼き等の購入、②研究会への参加、調査旅行の旅費、③その他、研究に必要な備品・消耗品の購入、④研究協力者等への日当、アルバイト謝金。なお平成24年度か引き継いだ研究費については、大学院生等のアルバイトを雇用し、『日本霊異記』の校訂・注釈を進めるうえで必要な作業(文献・地図、古辞書類などの確認等)を行う。この作業は平成24年度から継続して行っているが、作業進捗の都合で年度またぐとこととなった。平成25年度は計画・管理を見直し、確実に作業を進めたい。
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