2012 Fiscal Year Research-status Report
阪神・淡路大震災と東日本大震災避難所資料の所在調査と比較に関する研究
Project/Area Number |
24520787
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
水本 浩典 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30140396)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 阪神・淡路大震災 / 避難所 / 震災資料 / 東日本大震災 / 学校園保管震災資料 / 避難所運営 |
Research Abstract |
兵庫県立人と防災未来センター震災資料室所蔵震災資料(約17万点)のうちから、避難所関係分について、悉皆調査を開始した(人と防災未来センター許可済み)。初年度は、神戸市長田区及び兵庫区・須磨区関係震災資料の調査を完了した。 神戸市教育委員会の支援を受けて、神戸市内学校園に保管されている震災資料の悉皆調査を開始した。神戸市小学校校長会の了解を得て、小学校に関してはすべての小学校を調査対象とする。また、中学校については、20校を調査対象に調査を実施する計画を神戸市中学校校長会で了解を受けた。 調査済み震災資料のうち、本研究のために複写版作成が許可された震災資料については、副本を作成し調査不備などの再調査に備えることとし、順調に調査を継続している。特に、神戸市立駒ヶ林中学校に保管されていた震災資料(ダンボール箱5個分)をはじめ、神戸市立真陽小学校が保管している震災資料の調査及び避難所リーダー保管資料・当時ボランティア保管資料・当時小学校PTA会長保管資料などの調査を経て、学校園の様相を総合的に把握できるようになった。 東日本大震災被災地へのアプローチとして、宮城県名取市が収集・保管している避難所資料の把握を行うことができた。また、仙台市・宮城県山元町などに対するアプローチを通じて、被災地自治体における震災資料保存の動きが非常に鈍いことが判明した。 そのため、東北大学災害科学国際研究所や国立国会図書館が作成中(一部、公開)の東日本大震災アーカイブズの調査を行った。しかし、個人情報保護などの関係から、歴史学でいう一次史料の調査はできなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
阪神・淡路大震災後17年を経過し、関係資料などの散逸や保管場所が不明になるなど、当時の避難所関係資料の捜索と調査は困難を極めると認識していた。しかし、2年前の東日本大震災の経験を踏まえ、近い将来に発生が予測されている南海トラフに起因する大規模地震災害に向けた当時の震災資料の活用が急務であることが、神戸市など阪神・淡路大震災被災地では共通認識になってきている。 そのため、兵庫県立人と防災未来センター震災資料室所蔵震災資料の悉皆調査についても、制限を受けず悉皆調査を許可された。 また、神戸市教育委員会も本研究の緊急性及び有効性を認識されて、積極的な支援を受けることができた。そのため、神戸市内の学校園が保管していると予測される17年前の震災資料についても、積極的な調査強力を受けることができている。 東日本大震災避難所資料に対するアプローチについては、自治体へのアプローチをより積極的に深める必要を認識しているが、国立国会図書館や東北大学などの強力や助言を受けて、着実に成果をあげつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
①神戸市域の学校園保管震災資料調査については、初年度の基礎的な環境設定が終了しており、中間年である本年度は、当初予定した学校園の悉皆調査を完了する計画である。 ②兵庫県立人と防災未来センター震災資料室所蔵震災資料の調査を本年度も継続し、副本作成作業を行うとともに、同センターが所蔵している震災資料の形態分析を開始する予定にしている。特に、避難所における「簿冊」の作成状況を分析する必要性を感じており、本年度における重要なアプローチと位置づけている。 ③東日本大震災避難所関係資料調査については、被災地自治体に直接アプローチする方法を検討するとともに、初年度避難所資料の保管を把握できた名取市については、資料調査を試みる予定にしている。 ④阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」と喧伝されるほど避難所に多くのボランティアが殺到し支援を行った。その結果、避難所運営にはボランティアの参画が必須の要件になっていた。このボランティアが保管していると予測される震災資料の発掘が急務になっていると認識している。そのためのアプローチ方法を検討中である。 ⑤本研究は、歴史学でいう史料調査と分析という研究手法であるが、より積極的に現代文書の調査・分析を通じて、将来惹起されると予測される大規模地震災害に成果を活用するという新しい分野を開拓しつつあると考えている。そのための方策として、「神戸ながた震災学習研究会」を結成し、震災資料の分析及び活用方法を検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①本研究の多くが震災資料調査及び副本作成などを前提にした研究であるため、副本作成のための消耗品の購入が必須である。 ②本研究は、研究代表者1名による研究であるため、上記①の作業のための学生アルバイトや情報提供料の支出など、人件費・謝金への使途を計画している。 ③本研究が、1995年の阪神・淡路大震災を都市型大規模地震災害と位置づけ、2011年の東日本大震災を津波型大規模地震災害と位置づけ、両者に設営された避難所の実態を比較検討しながら、将来に惹起が予測されている南海トラフに起因する大規模地震災害に研究成果を活用することを目指している。そのため、東日本大震災被災地に対する調査も必要である。そのための旅費支出を一定額予定している。 ④本年度は昨年度発足した「神戸ながた震災学習研究会」での研究成果を検証するための避難所運営を実際に地域社会で検証するための方策を検討しており、会場使用料などの支出が必要になってくると予測している。
|
Research Products
(3 results)