2012 Fiscal Year Research-status Report
神都物語:伊勢の近現代史 (1869年-2013年)
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24520791
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
BREEN John 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 教授 (90531062)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 伊勢 / 神苑 / 宇治山田 / 都市 / 空間 / 儀礼 / 内宮外宮 / 古市 |
Research Abstract |
ここ1年間の調査ないし執筆は大体計画通りはかどった、と考えている。主な業績は論文「神都物語:明治期の伊勢」の完成。科研費申請の段階で、同論文執筆途中だったが、新たな史料調査をし、議論を大幅に推敲した。同論文は、高木編『近代日本の歴史都市:古都と城下町』(思文閣、2013年)の一章として刊行される。さらに、「近代化の中で変貌する伊勢神宮と出雲大社」(『歴史読本』6月号)にも執筆を行った。(前者は査読あり;後者は査読なし。)なお、研究代表者の研究は『朝日新聞』(2012年9月20日)にも取り上げられた。 上述の業績に滋賀県庁文書、神宮文庫、三重県庁文書、伊勢市立図書館、参宮街道資料館、松阪市郷土資料室、さらに(三重県立図書館所蔵)『伊勢新聞』、(ロンドン大学所蔵)Times新聞の調査の結果を折り込むことができた。滋賀県をケーススタデイにして神宮教院の活躍、神宮大麻の頒布状況が判明。神宮文庫では、参宮案内書類を見つけ、不明だった明治期参宮の在り方が判明した。三重県庁と伊勢市立図書館における調査の結果、参宮客、そして山田、宇治、古市の旅籠屋、妓楼に関する統計が見つかった。そして、伊勢市の参宮街道資料館では、多くの画像史料を発見し、明治期の宇治山田像が一層明確になってきた。伊勢市の郷土史家にも画像史料を多く提供してもらった。松阪市郷土資料室所蔵の旧御師福島御塩焼太夫史料も調査を行った。『伊勢新聞』では、「皇大神宮御鎮座1900年奉祝祭」、「古市祭」に関する情報、Timesには、明治22年の式年遷宮についての詳細な記事を見つけた。 以上の様に調査も執筆もはかどったが、逓信総合博物館、日通史料館、埼玉鉄道博物館、長野県立歴史館の調査はできなかったことを付記しておきたい。さらに、計画調書に記載していたように25年7月に開催する「国際シンポジウム 転換期の伊勢」の準備も順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、資料調査および論文作成はおおむね順調に進んでいるが、滋賀県庁、神宮文庫での調査はなかなか思う通りに進まなかった。手続き上の困難さがある上に、探している史料が出てこないこともあった。さらに、複数回、三重県立図書館へ『伊勢新聞』の調査に行ったが、調査中にプリンターが故障するなどのトラブルにも見舞われた。他の仕事に忙殺され、明治期の伊勢の調査に充分な時間が使えなかったこともあり、25年度は、近現代の伊勢に関する調査・論文執筆・講演・報告等等に可能な限り集中する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策については、「研究目的」、「研究計画」に記載している通りとなるだろう。つまり、大正・昭和(終戦まで)の伊勢の調査に力を入れる。既に着手している仕事ではあるが、伊勢への修学旅行の調査、昭和4年の式年遷宮の調査、そして大正・昭和における伊勢に関する教育・教化の調査が中心となる。また、24年度の調査により発見した新資料をもとに明治の伊勢についても可能な限り追加調査を行う。 他の研究活動としては、伊勢をめぐる国際シンポジウム(後述)を開催し、シンポジウムの報告書をまとめ『変遷する聖地 伊勢』の論文集として刊行する予定である。 また、『神都物語:近代現代の伊勢』も刊行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の使用計画だが、国際日本文化研究センターおいて『国際シンポジウム 転換期の伊勢』を開催する。本シンポジウムは、7月26日と27日の2日にわたり、北米、ヨーロッパ、中国そして日本の報告者16名とコメンテーター9名が参加するイベントである。 なお、研究代表者はさらにイギリスのロンドン大学、アメリカのPennsylvania大学,Portland大学,Oregon大学で報告する予定である。 そして昨年度、調査を行うことができなかった国内調査(とりわけ逓信総合博物館、日通史料館、埼玉鉄道博物館、長野県立歴史館におおける調査)にも研究費を使用する予定である。
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