2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520793
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
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Keywords | 佐渡金銀山 / 絵巻 / 鉱山技術 / 佐渡奉行所 / 絵師 / 山尾衛守 |
Research Abstract |
平成24年度に引き続き、未調査の佐渡金銀山絵巻の調査・撮影を行い、データベースの構築を進めた。併せて、鉱山技術書などの文献史料をもとに、それらの描写年代や絵師などについて分析を行い、佐渡金銀山絵巻群全体のなかでの位置付けを検討した。佐渡金銀山絵巻は、佐渡奉行所の絵図師(山尾氏)が佐渡奉行交代の度ごとなどに制作し、1730~1860年代までの約130年間に100点以上制作したと考えられている。しかし、現存する100点以上の絵巻の大半が、全国各地においてさまざまな理由で転写されたものであることがわかってきた。とりわけ幕末期には山尾氏以外の絵師による多様な絵巻が制作される事例が多いことを確認した。このような多数の写本の存在は、国内最大の金銀山だった佐渡金銀山そのものの重要性や、人々の関心の高さを反映すると考えられる。そして、このような絵巻のなかには江戸で出版された浮世絵の種本となった可能性があるものも認められるなど、その文化的影響力の一端についても明らかにした。 また、佐渡金銀山絵巻に付属的に描かれる銅の選鉱・製錬部分の描写についても、その仕法や技術の変化が反映されていることが明らかになった。 佐渡金銀山絵巻の料紙・法量・顔料の変遷解明については、より科学的な分析を進める必要があるが、19世紀前期以降の絵巻に使用される青色顔料が、18世紀のものとは明確に異なる傾向にあることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
佐渡金銀山絵巻の撮影およびデータベース構築の作業が順調に進んでおり、調査の過程で新たな絵巻の所在も発見されている。また、絵巻制作年代の重要な検討史料となる鉱山関係技術書の分析の深化により、絵巻の制作年代や分類の指標作りの検討作業が進んでいる。絵巻の絵師についても、佐渡奉行所絵図師(山尾氏)3代にわたる作風が明らかになりつつあり、それ以外の写本との見分けができつつある。以上により、絵巻群の全体像と個々の絵巻の位置付けの解明が進みつつある。なお、佐渡金銀山絵巻の料紙・法量・顔料の変遷解明については、より科学的な分析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度・25年度に引き続き、未調査絵巻の調査・撮影を行い、データベースの構築を進める。時間のかかる史料撮影については、研究協力者に依頼するか、業者委託を行い、作業の効率化をはかる。併せて、絵巻各場面の描写内容、とりわけ描かれた鉱山技術・道具の分析による制作年代の検討を文献史料とも対比させながら行い、絵巻の分類指標の作成を充実させる。また、各絵巻の絵師についても引き続き分析を進めるとともに、絵巻の料紙や顔料などの変遷の解明についても分析を深める。必要に応じて研究協力者との検討会も行いながら研究成果のまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた絵巻史料の撮影が都合により不許可となった箇所があり、撮影委託費分の残金が生じた。 これまでの調査で新たに発見された複数の絵巻の撮影委託費として有効に使用する。
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