2013 Fiscal Year Research-status Report
近世朝鮮における漢訳西学書の伝来と受容に関する研究
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24520799
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 信昭 富山大学, 人文学部, 教授 (50206512)
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Keywords | 朝鮮史 / キリスト教 / イエズス会 |
Research Abstract |
本年度は、昨年に続き、1631年に山東半島の登州で、朝鮮からの使節鄭斗源がイエズス会宣教師ロドリゲスから贈与された漢訳西学書の内容についての研究を行った。 研究の結果、鄭斗源が寄贈された漢訳西学書は、これまで一次史料として利用されていた『國朝寶鑑』の記述に基づいて分析するのではなく、『國朝寶鑑』の当該記事を叙述する際に利用した『乱中雑録』に基づいて分析しなければならないことが明らかとなった。 これまでの研究によって、鄭斗源将来の漢訳西学書をはじめて記述した史料は、『乱中雑録』であり、次にふれたのが『春波堂日月録』、そして次が官撰史料である『國朝寶鑑』となる。 日本や韓国に現存する『乱中雑録』と『春波堂日月録』は、きわめて少ない状況である。写本と版本の『乱中雑録』を入手し、その内容を分析している。また、『春波堂日月録』は、写本でのみ現存しているため、現存本はいつ頃に書写されたものなのか、という問題を含めて分析・検討を行っている。 なお、今年度は、「文禄・慶長役後に朝鮮被虜人と刷還使が将来した西洋情報」(『越境者の世界史』春風宇社、2013年)と題して研究成果の一部を論文として発表した。来年度も、史料調査を続けながら、鄭斗源将来の漢訳西学書の研究を完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで1631年に鄭斗源が将来した漢訳西学書について、諸史料で記述されていた内容について、なぜ違いが出てくるのか不明であった。しかし、それら諸史料の成立の順番がほぼ明確となったため、鄭斗源が将来した漢訳西学書の実際の内容が明らかとなった。 これによって、本研究の進展はほぼ順調に進んでいると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、国内・韓国内の大学図書館・史料館で所蔵する漢訳西学書を閲覧・調査すると同時に、朝鮮に、いつ頃、どのような漢訳西学書が伝えられていたのか、官撰史料か個人文集など通じて明らかにしていきたいと考えている。
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