2014 Fiscal Year Research-status Report
近世朝鮮における漢訳西学書の伝来と受容に関する研究
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24520799
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 信昭 富山大学, 人文学部, 教授 (50206512)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / イエズス会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年に続き、1631年に山東半島の登州で、朝鮮使節鄭斗源がイエズス会士ロドリゲスから贈与された漢訳西学書に関する研究をおこなった。贈与された漢訳西学書については、最近の台湾の研究者による成果によって、その全貌が明らかとなり、また、漢訳西学書の内容についても、そのほとんどが1620年代にイエズス会士によって著述された最新の情報を盛り込んだものであることが明らかとなった。鄭斗源が持ち帰った漢訳西学書の書目とその内容について、また持ち帰った漢訳西学書を含む西洋の文物の朝鮮における反響について、「朝鮮仁祖九年陳慰使鄭斗源が持ち帰った漢訳西学書とその反響」と題して論文をまとめている。 さらに今年度は、1631年の四年後の1635年に、当時朝鮮から江戸の徳川将軍に派遣された朝鮮通信使、その副使に任命されて来日した金世溓について研究をおこなっている。金世溓は、これまで研究されることのなかった人物であるが、彼が日本に滞在したときに書いた日記「東溟海槎日録」の1635年11月9日の条に、イエズス会士マテオ・リッチの世界図を見たと明記する部分がある。彼が見たものはマテオ・リッチのどの世界図なのか、また彼はその世界図をどこで見たのか、金世溓自身の研究も含めて、こうした問題については、これまで誰も追求してこなかった問題である。現在、金世溓に関する史料を収集しながら、彼が見たリッチ世界図はどのようなものであったのか、いつ頃、どこでその世界図を見たのか、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、1631年に鄭斗源が持ち帰った漢訳西学書に関する論文は、今年度中に完成し、発表されていなければならなかったものである。しかし、最近の台湾における研究の状況が明らかになったので、そうした成果も含めて論文を著述しなければならなくなった。こうした理由により、現在までの達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、国内・韓国・中国内の大学図書館・史料館で所蔵する漢訳西学書を閲覧・調査すると同時に、朝鮮にいつ頃、誰によって漢訳西学書が伝えられたのか、官撰史料個人文集などを通じて明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は平成27年度まで継続されているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度中に滞りなく使用していく予定である。
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