2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520803
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 隆郎 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60464260)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ワクフ / マムルーク朝 / オスマン朝 / アイユーブ朝 / エジプト / シリア / イスラーム法 / 公益 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エジプトとシリアにおけるワクフ(寄進・財団)制度の理念と現実の相関を、マムルーク朝時代(1250-1517年)を中心に明らかにし、ワクフ研究、さらには公益や福祉に関する比較史研究を展開していくことに寄与することを目指すものである。具体的には、次の3点について研究を進めた。1)マムルーク朝時代ワクフのケーススタディ、2)ワクフ経営の変遷の長期的な追跡、3)ワクフの諸問題とそれらについての議論及び影響の解明。 今年度は、このうち1)に関して、イギリスのボドレイアン図書館に所蔵されるワクフ認証文書、ドイツのゴータ研究図書館に所蔵されるマムルーク朝スルターン=バルスバーイ(1422-38年)のワクフ設定文書集、既刊ではあるが未だ十分に検討されたことのないスルターン=ガウリー(1501-16年)の孫娘ファーティマのワクフ設定文書およびアイユーブ朝末期シリアの知識人兼商人イブン・ムナッジャーのワクフ設定文書を研究した。イブン・ムナッジャーのワクフの検討結果は、2015年7月に国際学会で発表し、2016年6月締切の論文集に投稿するべく原稿に加筆修正を加えているところである。また、ボドレイアン図書館に所蔵されるワクフ認証文書とファーティマのワクフについては分析をほぼ終えており、2016年9月までに論文にして学術誌に投稿する。バルスバーイのワクフについては、なお検討が必要であるが、今後1年以内に結果を論文にまとめる予定である。 以上の研究、特にイブン・ムナッジャーのワクフ研究は、上記2)にも関わるものである。 3)に関しては、マムルーク朝末期を代表する知識人スユーティー(1445-1505年)のワクフの諸問題に関する見解を検討した論文が査読をへて近く出版される。 研究期間中に成果をすべて公刊するまでには至らなかったが、特に上記1)の点で研究を大きく進めることができた。
|