2014 Fiscal Year Annual Research Report
里耶秦簡・西北漢簡と実地調査による秦漢地域社会の研究
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24520804
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
藤田 勝久 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10183592)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 里耶秦簡「国際情報交換」 / 漢簡「国際情報交換」 / 秦漢史「国際研究者交流」 / 地域社会 / 文書行政 / 交通システム / 情報伝達「国際情報交換」 / 『史記』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)『史記』『漢書』の史料研究と史実の考証を継続し、藤田勝久、連携研究者の李開元ともに、その成果を国内外の学術論文、国際学会などを通じて公開した。藤田は『史記秦漢史の研究』(汲古書院、2015年2月)を刊行し、文字資料を素材とした『史記』の編集や、旅行による取材、漢代の人々による伝聞の性格と、秦漢統一国家の特質を指摘した。 (2)出土資料とフィールド調査では、2014年8月に成都で開催された中国秦漢史研究会第14回年会曁国際学術研討会に出席した後、19日~27日まで四川省、甘粛省、陝西省の早期秦文化の遺跡、都城と古墓、秦封泥、漢長安城などの調査を行った。これは2012年度の長江流域、2013年度の西北遺跡につづいて、早期秦文化と秦漢遺跡の調査を追加したものである。(3)出土資料の分析では、里耶秦簡の用語一覧作成と分析を継続し、その成果を学術論文や、国際学会などを通じて公開した。また肩水金関漢簡と懸泉漢簡の分析を継続して進め、交通システムや文書伝達・情報処理の方法について整理した。 (4)愛媛大学で12月13日に「中国資料学国際シンポジウム」を開催した。以上の成果をふくめて、最終年度に研究の総括をした。 出土資料の分析とフィールド調査では、戦国秦と秦代に成立した郡県制と情報伝達のシステムが、漢王朝の西方本拠地に継承され、武帝期には辺郡にも適用されるため、この領域範囲では公文書の簡牘にみえる情報処理の原理が一致することを明らかにした。また『史記』『漢書』や文書伝達の研究では制約があった郡県制の実態について、情報伝達(文書逓伝、文書伝達、情報処理)という視点から、地方行政の運営と交通システムの特徴を指摘した。このように簡牘の機能に注目する研究は、漢代以降の中国と東アジアの韓国、日本古代の国家形成と簡牘を比較する際にも、一つの方法として意義をもつと考えている。
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