2014 Fiscal Year Annual Research Report
上海のユダヤ人難民社会における生活再建に関する研究
Project/Area Number |
24520806
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 吉雄 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (70231975)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 上海 / ユダヤ人 / 難民 / 生活再建 |
Outline of Annual Research Achievements |
1938年~1951年の10年余りの間、中国の上海に約1万7000人の中欧系・東欧系ユダヤ人難民のコミュニティが存在した。本研究では、気候、言語、文化、習慣、社会制度などが故郷のヨーロッパと大きく異なる上海において、ユダヤ人難民たちがコミュニティとして生活の再建に取り組んだ活動を明らかにする。 本研究の最終年度は、上海のユダヤ人難民社会における医療活動と青少年支援という2つのテーマに取り組んだ。 研究代表者は上海市档案館に保管されている「欧州猶太人難民総合性材料―衛生条件。日本当局管理状況等。1939~1944年」という資料の中に、「上海ヨーロッパ系ユダヤ人難民支援委員会」(Committee for the Assistance of European Jewish Refugees in Schanghai)の医療委員会が上海共同租界工部局の公衆衛生局長に提出した、英語で書かれた1939年3月~1940年4月の活動報告書を発見した。この報告書には、医療委員会が管理運営したユダヤ人難民専用の移住者病院、隔離病院、夏季疾病用病院、産科病棟、中央薬局、難民収容施設に設置した外来診療部門の活動状況、上海の既存の病院との連携、医療委員会による学校衛生事業、社会福祉事業が紹介されている。医療委員会の活動により、上海移住1年目の1939年の難民の死亡率は低く抑えられた。 上海への移住により学業が中断された15歳以下の子どものために「上海ユダヤ人青少年協会学校」(Shanghai Jewish Youth Association School)が設立された。しかし就学年齢を過ぎた10代後半~20代前半の若者たちは失われた世代になろうとしていた。この問題を憂慮した上海ユダヤ教区の福祉部門は青少年局を設立し、難民の中の手工業者たちの協力を得て、若者たちの職業訓練と就職斡旋を行った。
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Research Products
(2 results)