2013 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム帝国におけるハーッサに関する研究ー家産帝国理論構築に向けてー
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24520807
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90374701)
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Keywords | 家産帝国 / イラン / サファヴィー朝 / 国際研究者交流 グルジア / 国際情報交換 アルメニア / 奴隷軍人 / イスラーム王権 |
Research Abstract |
本研究では、ハーッセ概念を明らかにすることで、中世のイスラーム国家における君主の所有概念と国家像を把握することを目的としている。研究年度2年目は、初年度に引き続き、ハーッサ概念に関する先行研究の精読と海外研究者との協力関係の深化に取り組んだ。特に比較的豊富な史料の利用と先行研究が存在するグルジアについて、Gabashviliなど20世紀の研究について把握するように努めた。サファヴィー朝中央宮廷の拡大家産メンバーとして独特の位置を占めたグルジア王権のもと、独特のシステム受容が見られるが、この点について次年度以降さらに論点を深める予定である。また、グルジアにおいてサファヴィー朝のシャーの側近ながら反乱を起こしたグルジア人武人に関する報告を国際学会で行った他、積極的に現地の研究者と交流・意見交換を進めることが出来た。アルメニアについても研究ネットワークの構築に努めた。このほか、サファヴィー朝を訪れたヨーロッパ人の中でも、アッバースの時代に特にキリスト教徒マイノリティと深い関係を有したイタリア人ピエトロ・デッラ・ヴァッレの旅行記について精読し、当時のイラン社会における王権と宗教マイノリティの関係についても知見を得え上で論文を執筆した。先行研究でも、王族と宗教マイノリティの関係については様々な情報が存在するので、来年度以降の具体的な研究検討の中で、こうした宗教マイノリティとの関係についてはより深めていくことを考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展している。研究年度二年目にはグルジアの研究の把握など、より具体的に知見を深めることが出来た。また、グルジア・アルメニア等の研究者との意見交換や国際学会での発表などを通じて国際交流において大きな成果を上げることができたと考えている。また、ヨーロッパ人の旅行記について集中的に仕事をすることが出来た。ただし、イランにおける研究やペルシア語研究史料についてのアプローチが若干遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、王領地のみならずサファヴィー王権に関する先行研究に再度広くあたることと、王領地や王の家産的従者として中央宮廷に仕えていた官人に関する情報を詳しく検討することが必要である。これまでもグルジア等の研究を参照しているが、地方社会における王権の影響力を測る作業を史料の残存状況に応じて柔軟に進めていく予定である。また、海外の研究者の中でもサファヴィー帝国の領域はもとより、中東研究の盛んな欧米の研究者との積極的な交流が理論進化のために必要であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進める上で特に注目するイラン周縁部としてのグルジア・アルメニアに関する世界的な研究者であるRapp博士の招へいを希望していたが、結果的に来日が遅れたことが最大の理由である。 Rapp博士の来日は2014年5月末に決定しており、速やかに次年度使用額がすべて利用される予定である。
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