2014 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム帝国におけるハーッサに関する研究ー家産帝国理論構築に向けてー
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24520807
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90374701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サファヴィー朝 / コーカサス / 「国際研究者交流」 グルジア / 「国際研究者交流」 アメリカ / 「国際情報交換」アルメニア |
Outline of Annual Research Achievements |
サファヴィー朝に仕えたコーカサス出身エリート軍人・政治集団を中心に、広く中東の諸政体で活躍したコーカサス出身のマイノリティ集団について、君主との絆の再検討などを行った。研究報告としてはイェール大学の国際学会The Persianate World: A Conceptual Inquiryに参加申請が受理され、招待報告の機会を得た。ここでは、Fresh Recruits from the Caucasus Serving the “Persianate Empires”と題して、17世紀から19世紀までイラン諸王朝で活動したグルジア・アルメニア系有力家門の出身地との関係などを明らかにした。また、こうした「フロンティア」出身者について、王権への「従属」のあり方に注目した報告として、歴史学研究会で「フロンティアからフロンティアへ」と題する報告を行い、『歴史学研究』誌に研究報告をまとめた。このほかにもサファヴィー朝の君主と軍事集団について、九州史学会大会イスラム文明学部会にて報告を行った。グルジアでも2度国際学会で報告の機会を得た。 また、中東世界に歴史的に統合されつつも、北方の遊牧・ステップ世界とも密接な関連を持ったコーカサス地方の特徴は、こうした「奴隷軍人」などコーカサス出身ディアスポラの人々の人生に大きな影響を与えてきたと考えられる。これに関連して、コーカサス地方の地政学的位置をウクライナ問題などとの接点も含めて環黒海地域研究の枠組みで検討した論考や各種論説等を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、モノとヒトの両面から、中東イスラーム諸王権を支えた直属軍団構成員の実相に迫ることで、王権のあり方を明らかにすることを目的としている。ヒトのあり方について、十分な成果を上げており、公刊の準備も進めている。ただし、平成26年度に海外から複数回の招聘を受けるなど、特に支えた人的集団に関する研究成果の報告に多くの労力をさくことを余儀なくされた。また、特にサファヴィー王権に反逆したグルジア系軍人に関する史料と研究は現地で注目を集めたが、当初の予定よりも研究の幅が広がり、予定していた研究課題について遅れが出ている。とりわけ、土地支配の問題や役職授与のメカニズムなど、より物質的基盤に迫るための研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、地方史史料などの検討を進めることで、遅れている物質的基盤に迫るための研究を進める必要がある。また、これまでの研究成果の公刊についても、日本語はもちろん英語とグルジア語など現地語でのまとめと成果の公刊の準備に励む予定である。加えて当初予定に組み込まれていなかった1626年のグルジアにおける反乱については本研究の主題である王権の実相とも関連するテーマであり、現地での関心も高いことから、本研究の主題との関連付けを意図しながら統合を図る予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度はアメリカ・イェール大学の学会とグルジア・イリア大学の学会において、学会主催者が旅費を含む一部費用を負担したため、当初の予定に比べて交通費・滞在費等が大幅に支出を節約することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ペルシア語年代記のグルジア遠征関連箇所について、校訂と注釈の上、グルジアでの出版を検討している。実現に向けて、テキストの校訂などについて協力者を頼んで謝金などの支出が大幅に増加されることが見込まれる。また、国内外での学会発表や資料調査を複数回、積極的に行う予定である。
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