2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520808
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
平田 茂樹 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (90228784)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 御筆手詔 / 分班奏事 / 合班奏事 / 専権宰相 / 政治空間 / 御前会議 |
Research Abstract |
両宋間の政治空間の変質の問題について、主として北宋における当該問題について検討を行った。魏了翁の「応詔封事」は両宋間の政治空間の変質を考える上で、極めて重要な史料であるが、主としてこの史料を解読することを通じて次のようなことが明らかとなった。北宋前半期においては皇帝と官僚間を繋ぐパイプは多様に存在しており、それはとりわけ御前会議を中心とした交流に現れている。ところが、王安石の新法改革以後、皇帝と特定の宰相とを繋ぐパイプ(主として「御筆手詔」に代表される文書制度に典型的に現れる)が強化されると共に、宰属(宰相の政策処理部門、中書条例司あるいは尚書都司など)が発達していく傾向が現れ、皇帝と官僚とを繋ぐパイプは制限されていくことになる。具体的には、北宋前半期は「分班奏事」(官司が順次、皇帝の面前に赴き直接上奏する制度)の制度が行われ、通常5班(5グループ)の上殿奏事が行われていたのが、後半に於いては2班(三省と枢密院の外、台諫など極めて特定の官司に限定される)と数が減少した上、その方法も三省と枢密院が合同で行う「合班奏事」へと変化していく。更には宰相・執政の数が減少するだけではなく、台諫、給事中、中書舎人、翰林学士といった皇帝の「耳目」となる官僚の人事に専権宰相が介入し、彼らの文書作成をコントロールするようになっていく。こうした傾向が次の南宋の専権宰相体制へとつながっていくのである。 以上の成果について、国際学会にて報告を行うと共に、国内の雑誌に成果を公表する準備をしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定されていた北宋の政治空間の変質の問題についてはほぼ予定通りの研究を進めることができた。国際学会での報告ならびに学会誌での公表(投稿後、先方の要求により現在修正中、ただし掲載は決定)を行い、その成果についても内外に示すことができる予定である。とりわけ、北宋の御前会議の実態についてほぼその特質を明らかにできたことは大きな成果と言うことができる。、
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は南宋の政治空間の変質の問題について検討を進めていく。魏了翁『鶴山先生全集』には南宋期、とりわけ韓たく冑、史弥遠の専権宰相期に関わる重要な史料が多く残されており、この史料を中心に当該問題について検討を進めていく予定である。逐次、この史料を補完する随筆、雑記、小説史料の解読も進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主たる支出予定としては、9月に北京大学で開催される国際学会での報告に伴う海外出張、その報告のための翻訳費用、ならびに国内の研究機関での資料調査、及び当該問題を研究する上で必要となる図書の購入を予定している。
|