2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520808
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
平田 茂樹 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (90228784)
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Keywords | 手紙 / 専権宰相 / 路の官府 / ネットワーク / 政治過程 / 皇帝 / 複層的な構造 |
Research Abstract |
両宋間の政治空間の変質の問題について、主として南宋における当該問題について検討を行った。魏了翁の『鶴山先生大全文集』の手紙を解読することを通じて、次のようなことが明らかとなった。 手紙はこれまで文学、思想史研究を中心に用いられてきたが、政治史研究に於いてもきわめて有効な史料であることを確認した。手紙には二つの側面がある。一つは交際、意見の交換、情報の伝達といった日常生活と密接に関わるものであるが、宋代の場合、当時の科挙制や薦挙制度を基軸とした官僚制度と深く関わる形で用いられている。そのため、科挙の儀礼に関わるもの、赴任・着任時の上司への挨拶、部下の推薦、上司の赴任・着任のお祝いなど、士大夫ならびに官界のネットワークやそれと関わる当時の儀礼や慣行の様子を窺うことができた。 第二は、公式文書と同様な機能を有するものであり、政策の提言や情報の伝達などが行われる。今回分析を行った魏了翁の手紙は、公式文書を朝廷や官府に提出すると共に、同時に宰相・執政、地方の長官や部下に送り、政務の処理を行っていることを確認できた。手紙の対象相手は宰相・執政、地方の長官・部下が多く、南宋時期において専権宰相が数多く現れてきたこと、路の都督府・制置司・宣撫司・総領所といった軍政と深く関わる官府が発達史、大権を握るようになったことと関わっており、北宋の皇帝を中心とした、中央集権的な政治過程に比べ、南宋が中央に於いては皇帝と宰相執政、地方に於いては路の官府と、より複層的な構造となってきたことを表している。 以上については国際学会にて報告すると共に、国内の学会に於いても報告を行った。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定されていた南宋の政治空間の変質の問題についてほぼ予定通りに研究を進めることができた。国際学会での報告ならびに学会誌での公表を行うことができ、その成果について内外に示すことができた。とりわけ、公式文書と手紙を同時に駆使しながら政治過程が展開されることを明らかにできたことは大きな成果と言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり、両宋間の政治空間の変質についてとりまとめる。具体的には魏了翁『鶴山先生大全文集』の史料の解析を続ける一方、同時に小説、随筆などの他の史料の解析を通じて、両宋間の政治空間の変化にとどまらず、その背後に存在するネットワーク、システムの変化の問題についても同時に明らかにする予定である。
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