2014 Fiscal Year Research-status Report

中世盛期スペイン東部における「辺境」と入植運動の空間編成論的研究

Research Project

Project/Area Number	24520822
Research Institution	Hiroshima University
Principal Investigator	足立孝広島大学, 文学研究科, 准教授 (90377763)
Project Period (FY)	2012-04-01 – 2017-03-31
Keywords	中世ヨーロッパ / スペイン / 辺境 / 征服・入植運動 / 定住形態 / 空間編成 / 封建制
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、ヨーロッパの拡大期に相当する11世紀から13世紀までを時間的枠組みとし、まさしく拡大途上のヨーロッパに編入される典型的な「辺境」とみなされてきたイベリア半島東部における征服・入植運動の展開過程と、これと並行した新たな空間編成の生成・組織過程を形態生成論的に明らかにするものである。本年度は昨年度の研究成果をふまえて、以下の作業を行った。 (1)エブロ川南岸、下アラゴン東部の征服・入植運動の展開にともない生み出された空間編成のあり方を実証的に明らかにするべく、当該空間で領域的な支配ユニットを形成したテンプル騎士団および聖ヨハネ騎士団の文書群を、約１ヶ月にわたりスペイン国立歴史文書館（マドリー）、アラゴン連合王国文書館（バルセローナ）、フランス国立図書館（パリ）での現地調査をつうじて渉猟・分析し、それらを材料に個別専門研究を行った。 (2)上記のテンプル騎士団および聖ヨハネ騎士団の文書群を調査するなかで、両者の管区内エンコミエンダで作成されたカルチュレールを比較検討し、一般に理念的編纂物とみなされる当該史料カテゴリーがもともと機能的に実務的な側面をもちあわせていたことを明らかにしつつある。 (3)征服・入植運動で生成した城塞集落の具体的な領主制的支配・経営形態の理念と現実を史料にそくして明らかにするべく、ウエスカ司教に帰属するエブロ川流域の一所領の会計記録を材料に個別専門研究を行った。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 1: Research has progressed more than it was originally planned. Reason 本研究は、作業の円滑化・効率化を図るべく、イベリア半島東部を全体としてエブロ川流域、下アラゴン西部、同東部の３地域に分割して、それぞれの定住分布と空間編成を類型論的に把握するものである、平成26年度はそれらのうち第３の地域における定住分布と空間編成を分析する予定であったが、その作業は現地調査をつうじて、文献史料を筆頭に、考古学知見、集落プランの蒐集・分析をつうじて遂行され、同時に当該地域に伝来する文書群の史料論的な検討にもすでに手がおよんでおり、いずれについても個別専門研究を準備することができたからである。
Strategy for Future Research Activity	本研究はもともと作業の円滑化・効率化を図るべく、エブロ川の貫通するイベリア半島東部を便宜上３地域に区分し、各地域の定住・空間編成を文献史料、考古学知見、古地図、空撮写真を駆使して領域横断的に検討したうえで、全体の所見を総合するという方法をとっている。ことに史料の刊行が依然として進んでいない第２・３の地域については現地調査による以外ないが、伝来史料が比較的豊富であるためにこれまでは第３の地域にかかわる史料分析・検討がやや進んでいる状態である。それゆえ、今後はとくに第２の下アラゴン西部にかかわる史料蒐集・分析が優先的に行われ、やはり個別専門研究を準備したうえで全体を総合する方向へと作業を差し向けるものとする。