2014 Fiscal Year Annual Research Report
地方行政官の動態に見る近世ロシア中央-地方関係の解明
Project/Area Number |
24520825
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
田中 良英 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (20610546)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 西洋史 / ロシア / 近世 / 地方行政 / 貴族 / 官僚 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀ロシア帝国における地方行政官の動向を対象に分析される「中央-地方関係」を一つのモデルに、近世西洋世界における国家統合の実態解明を目的とする本研究では、平成26年度に主として1730年代、すなわち女帝アンナ・イオアンノヴナ治下での大臣官房や元老院など中央行政機関による地方行政官人事のメカニズムと共に、現地に任用された行政官と地域社会との関係性について分析した。このアンナ期については、皇帝権力の弱体化に伴い非ロシア人が跋扈したロシア史上の「暗黒時代」として、従来本格的な研究が乏しかったが、今年度の研究は地方行政官人事を切り口として、当時の政策決定過程の実態を解明し、地縁性への配慮の乏しさに象徴される人材登用の原則が、基本的に従来と大きく相違しない点を明示しつつ、それと同時に、一部の人選から推測される、ロシアにおける地方社会の「萌芽」の予兆を示唆した点に意義があると考えられる。 また地方住民による行政官への反応を探る手段として、ロシア国立古文書館(РГАДА)に所蔵される嘆願書に着目し、官吏の日常的な勤務態度に迫ることも試みた。こうした史料は、地方行政官による不正や圧力を強調する点で偏りもあるものの、それを受理した地方・中央政府の事務処理や裁決の内容と合わせて分析することで、地方社会の「日常史」を明らかにする意義を有する。 研究期間全体を通じては、大きく①1719~39年にロシア各地に任用された地方行政官の個人情報の数量的整理、②彼らの人選を決定した原則や背景の分析、③地方行政官による具体的勤務の実態解明、において一定の成果を得た。これらの成果を通じて、近年国内の多様性が指摘されがちな近世西洋国家との対照性が総じて目立つことになった一方で、こうした地方官僚の日常史的分析を通じて、改めて近世における中央集権化の深度を考察する視角を提示した点にも本研究の意義があると思われる。
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