2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520827
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
千葉 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20345242)
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Keywords | 西洋史 / 中世史 / 地形 / 隠者 / 王権 |
Research Abstract |
本研究計画は、①紀元千年期の隠者ネットワークの解明、②聖ミカエル崇敬の拡張過程の解明、②王の参籠についての解明、④改革派修道士=建築家の動向の解明、の4点を研究計画の柱としている。2年目にあたる平成25年度は、①、②、③に重点を置きつつ、とくにイタリア北東部(アルプス山圏)、クライン、イストリア、ケルンテン辺境伯領地域に関する研究を進めた。8月13日~9月3日に行なった海外出張では、まずミュンヘン大学附属図書館を中心に、プロジェクトに関する史資料を収集し、その後、イタリア北東部(ボルツァーノ、ヴェローナ、マントヴァ)、クライン・イストリア辺境伯領該当地域(コーペル、クラニ)、ケルンテン辺境伯領該当地域(フィラッハ、クラーゲンフルト、ミルシュタット)での現地調査を行なった。紀元千年期の神聖ローマ帝国の東部辺境を構成したこれらの地域は、アドリア海を舞台とする物資・人の流通、アルプス山圏東部における峠道を行き来する物資・人の移動の結節点として、ビザンツの影響下に、固有の信仰実践を育んだ。今回の調査で得られた知見は、この圏域に存在した修道院・教会群が紀元千年期の隠者ネットワークならびに聖ミカエル崇敬と関係を持っていたこと、神聖ローマ皇帝の滞在が、イタリア半島における隠者の場合と同じく、ネットワークの形成・結節に大きな影響を及ぼしていたことである。これらの成果を踏まえ、研究年度の後半では、収集した文献と史資料の解析を進めつつ、次年度における研究成果の公表へ向けた準備を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紀元千年期の隠者ネットワークと特殊地形のネットワークに関する基幹研究地域のうち、アルプス山圏東部、ケルンテン・クライン・イストリア辺境伯領該当地域(オーストリア、スロヴェニア、イタリア)に関する調査がほぼ完了した。関連する史資料の収集も進み、その解析も順調に進んでいる。前年度の研究成果との接合をはかりつつ、次年度の重点研究対象地域の研究方針を定め、4年間の研究を通じた隠者ネットワーク全体像の把握へ向けて順調に研究は進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究成果を踏まえると、紀元千年期の隠者ネットワークの総体を解明するために重要となるのは、神聖ローマ帝国西部地域からイングランドへのネットワークの拡張と接続の実態を把握することである。特殊地形と隠者という観点からは、1年目に調査したノルマンディー地方とイングランド南部との関係を探るべく、モン・サン・ミシェルと地形上類似したセント・マイケルズ・マウントの果たした役割が注目される。と同時に、大陸からカンタベリ大司教座に至る経路を画定していくフィールド調査と、それを裏付けるための史資料の調査・収集が不可欠となる。王家の接続という点でも、オットー朝とウェセックス王家との関係は、血縁関係=政治同盟として、紀元千年期の基幹的な結びつきであった。両王家と隠者の関係を明らかにすることも、今後の課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用を予定していた物品(文房具)の数が実際に必要とした数をわずかに上回ったため、295円という軽微な額ではあるが、次年度の使用に回すことが必要となった。 毎月の物品使用の予定をより厳密に管理することで、物品費(文房具)の費目として執行する計画である。
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Research Products
(4 results)