2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ現代史における国民形成と貧困問題―人種境界との関係を中心に
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24520830
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 耕太郎 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00264789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1910年代から20年代のアメリカを主たる対象として、貧困問題とナショナリズムの相互関係を検証するものである。研究3年目の本年度は地方レベル、都市レベルで叢生した貧困対策や住宅改良が、全国レベルの思想言説や社会運動にいかに反映し、またそのことが実際の政治にどのようにフィードバックされていくのかという課題を中心に研究を進めた。特に、都市の救貧事業を足掛かりに全国的なオピニオンリーダーとなったJane AddamsやJohn Ryanらの「社会的平等」論に注目し、この新しい反貧困論が従来の社会主義や新興の黒人市民権運動と比して、当時の政治・思想空間にどのようにマッピングできるかを明らかにした。さらに、かかる「社会的平等」なるものの歴史的展開を検討することで、広く20世紀初頭のアメリカ革新主義と人種的なナショナリズムの複雑な関係を検証した。この作業は、革新主義の国民観や経済観が第一次大戦後の世界にいかに受け継がれ、制度化されていくかというより大きな問題につながっている。なお、本研究の成果の一部を、論文「『アメリカの世紀』の始動」、『現代の起点―第一次世界大戦 第4巻 遺産』、山室信一他編(岩波書店)所収と、単著『20世紀アメリカ国民秩序の形成』(名古屋大学出版会)のかたちで出版した。特に後者においては、都市改革者の貧困問題への能動的な関わりと「社会的平等」への関心から、人種的境界を内包する20世紀特有のアメリカ・ナショナリズムが出現する過程を跡付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日程の都合から、夏季に予定していたワシントンDCとシカゴでの実地調査を行うことができなかったため、特に1921年母子衛生法と1923年都市区画法をめぐる議会動向の検証作業に遅延が生じた。ただし、こうした施策の前提となる、同時代の政治情勢や思想潮流についての分析は、日本での文献研究により順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第4年次となる27年度は、1920年代における社会政策の形成と北部での人種隔離の検証を軸に、20世紀アメリカ・ナショナリズムの歴史的意義を考察する。具体的には、1920年代のイリノイ州母子年金制度と連邦母子衛生法(1921年)と都市区画授権法(1923年)の分析を中心に研究を推進する予定であり、ワシントンDCの連邦議会図書館所蔵の議会史料および、シカゴ大学レーゲンシュテイン図書館所蔵の母子年金制度関連の史料を体系的に収集・分析する予定である。 第4年次は、研究最終年度であるので、これまでの3年間の研究成果をふまえて、貧困問題をめぐる知識人とマイノリティの思想と実践が、いかに社会・福祉政策の形成に結実したか、またそのことが移民の同化と人種分離を同時に推進した20世紀アメリカ国民国家とどのように結びついていたかを委細に検討したい。
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Causes of Carryover |
本年度の研究において、日本での文献収集とその分析作業は順調に進めることができたが、およそ3週間の予定で計画していたワシントンDCおよびシカゴでの文書調査が日程等の問題から実施できなかった。そのため、研究を1年間延長し、海外調査のための費用を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のような理由による研究の延長であるので、次年度使用額として計上された助成金は、研究の推進に必要な若干の文献購入をのぞいては、当初より計画していた在米調査に主として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)