2015 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ現代史における国民形成と貧困問題―人種境界との関係を中心に
Project/Area Number |
24520830
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 耕太郎 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00264789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 南北アメリカ史 / 人種問題 / アメリカ研究 / 20世紀史 / 西洋史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、萌芽的な社会政策の必要が認知され始める1910~20年代のアメリカ政治・社会を主たる分析対象として、貧困問題と国民形成、さらにはカラーラインの構築との相互関係を検証するものである。研究第1年目から第3年目までは、主に同時代の社会思想や救貧など、政治的リベラルの思考と活動を中心に研究を進め、あわせて都市連盟等の黒人エリートの対応にも注目してきた。研究最終年となった平成27年度は、より政治的な領域に焦点を合わせ、特に1920年代の連邦政府による社会・福祉政策を考察した。具体的には、連邦児童局と同局長Julia Lathropの指導に注目して、1921年母子衛生保護法(Sheppard-Towner Act)の立案から実施の過程を詳細に分析した。Lathropの思想的背景を明らかにするために、シカゴ大学所蔵のGrace Abbott文書、および、S. Breckenridge文書の中のLathrop関連書簡を収集し、検討を加えた。また、ワシントンDCとCollege Park (MD)でも調査を行った。アメリカ議会図書館では連邦下院州際通商委員会、母子衛生保護法公聴会記録を閲覧し、国立公文書館IIでは1920年代前半の連邦児童局記録を通覧して同局と母子衛生保護法との関係を明らかにした。加えて、27年度の研究では、1924年~28年に出版された商務省都市区画制諮問委員会報告書(自治体ゾーニング授権法案関連報告書)を入手し、1920年代に拡大する大都市圏のゾーニング政策を当時の都市計画と貧困問題との関連から検証する手がかりを得た。なお本年は、アメリカ・ナショナリズムの歴史的変容をより一般的に現代史の展開の中に位置づける理論的な考察も進め、『歴史評論』第780号(2015年4月)誌上に論文「アメリカ『現代史』の起点を求めて―アメリカ・ナショナリズム再考」を上梓した。
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