2013 Fiscal Year Research-status Report
『健康全書タクイヌム・サニターティス』をめぐる多角的研究
Project/Area Number |
24520832
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
山辺 規子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (00174772)
|
Keywords | 健康全書 / タクイヌム・サニターティス / 中世ヨーロッパ / 養生論 / ファッション / 食文化 / 装飾写本 |
Research Abstract |
『健康全書Tacuinum Sanitatis 』の未収集の写本の収集については、大英図書館の写本Add 18701, Sloane 3097, リエージュ大学所蔵Ms.1041の写本の実物を確認し、画像データとして研究利用できるようにした。このほか、フランス国立図書館のItalien 1108, Latin 6908, ニューヨーク市立図書館のSpencer Collection 65, オーストリア国立図書館のCode 5264, ミラノのAmbrosiana, P.161.Sup.を新たに収集した。 このような写本データの整理について、基本的作業を継続しておこなうとともに、関係が深い装飾写本と関連研究書の図版利用のため、ブックスキャナーを購入して、比較研究につなげている。 2013年8月には国内の関連分野の研究者と研究会を開催し、意見交換をおこなった。2013年9月にはボローニャ大学の研究者と意見交換をおこない、さらに2014年3月に打ち合わせをして共同研究の検討を継続することとした。 3月にはベルギーのルーヴェン大学を訪問し、同大学の研究者との協力の可能性を探ることになった。また、イタリアのトレントを訪問して『健康全書』の中でも評価の高いウィーン写本(Vid.2644)の持ち主でもあるトレント司教が描かせた「鷹の塔」の国際ゴシック様式のフレスコ画を見学して、『健康全書』の図版との共通性を確認できた。 以上のような段階であるため新しく収集したデータに基づく研究発表はできなかったが、これまでの研究に基づき包括的な生活史の史料としての『健康全書』について駒澤大学史学会大会で話したほか、5月にはビューティサイエンス学会、11月には金沢大学西洋史講演会において、特に男性服の変化に関わって『健康全書』の図版の持つ意味を論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度請求したにもかかわらず、入手できていなかった写本(未刊行)の画像データを世界各地の図書館に求めたが、研究上適切な画像を入手のため、かなり高額の使用料と時間を要求され、交渉を余儀なくされた。その結果適切な価格でのデータ入手には成功したが、年度の大半を画像入手に費やし、研究活動としては基本的なデータ整理にとどまった。また、年度後半には国際交流の重要な仕事を任され、当初予定していた研究上の時間を利用できず、不本意ながら研究の遅れを生じることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ボローニャ大学のMontanari教授、M.G.Muzzarelli教授, 大分大学城戸照子教授、富山大学徳橋曜教授、上智大学児島由枝准教授及び若手の研究者と、これまでにまとめたデータの確認に加えて、本年度入手した写本史料についての検討、さらに同時期の国際ゴシック様式の図版、他の中世ヨーロッパの養生訓との比較研究をおこない、最終年度でできるかぎりのデータ整理と考察をおこなう。
|
Research Products
(5 results)