2013 Fiscal Year Research-status Report
中世ブリテン史における貨幣製造人の「世界」-C.973年~1279年-
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24520834
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
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Keywords | 中世イングランド / medieval silver penny / 銀貨 / 銀の含有量 / 重量基準 / 貨幣製造人 / ミント / moneyer |
Research Abstract |
研究はマクロな視野とミクロな視野で行った。 マクロな視野では、今年度は、本科研費研究を進めるために、中世ヨーロッパ貨幣史研究会を拡大した。フランス、フランドルに京都女子大学教授山田雅彦、イタリアと地中海域に大分大学教授城戸照子と富山大学教授徳橋曜、スペインに九州大学准教授阿部俊大、ビザンツに福岡大学講師西村道也、北欧に埼玉大学非常勤講師成川岳大を集めて研究を進めた。2014年2月23日、熊本において第三回貨幣史研究会を開催しこれまでの研究を総括するとともに、Peter Spufford, Money and Its Use in Medieval Europe, Cambridge UPの翻訳作業を推し進めた。翻訳は刊行する予定である。 マクロな視野ではこれまで進めてきた(1)銀の含有量に関する調査のまとめに入った。イングランドの貨幣(銀貨)は85%以上の高品質を一般的に維持してきた。973年のエドガの改革以後は、純度はさらに上がり、銀含有量90%から97%の幅できわめて良質の銀貨が発行されてきた。1050年から1080年の政治的にひっ迫した時期でも93~93.5%の含有量を示していた。これに伴い、周辺地域の権力者もイングランド銀貨の重量基準に合わせて銀貨を発行しようとしていたという仮説をたてることができた。今年度(平成26年度)は、これらの研究成果を活字にする予定である。最初に5月の日本西洋史学会の公開講演(「ヨーロッパ形成期におけるイングランドと環海峡世界の構造と展開」)のなかに研究の成果を盛り込む。 (2)イングランドの通貨は973年から1158年まで短期的に更新が行われてきた。その実態は残存するコインからしか検証できない。庶民エベルでそれを検討できる史料として12世紀に編纂された「ハンズベリの隠者ウルフリックの生涯」に行き当たった。現在この史料を分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(I) 文献と史料の収集は、ほぼ予定通りに行うことができた。イングランドにおける在外研究も予定通り行えた。そのなかで、とくに「ハンズベリの隠者ウルフリックの生涯」を得たことは大きい。銀貨の新旧更新が庶民にも影響を与えたことを確認できたからである。またMartin Allen, Mints and Money in Medieval Englandが上梓されて、そこから得た知見と情報も大きかった。しかし、減の含有量の分析は機器を扱える担当者の退職で計画通りには進展しなかった。その反面、収集した文献で情報を補うことはできた。 (II) 国際シンポジュウムは、計画の段階までは進んだが予算の関係で今年度は延期した。最終年度の実行を考えている。 (III) 成果刊行に関しては、翻訳は現在4割程度までで終わっている。啓蒙書については別の本の刊行(鶴島博和『バイユーの綴織』を読む」)」が遅れたために準備にはいることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(I) 貨幣製造人のデータベースの作成に入る。今年はロンドンとリンカンシャを中心に作成する。 (II)5月の日本西洋史学会の公開講演で、「ヨーロッパ形成期におけるイングランドと環海峡世界の構造と展開」と題する基調講演を行い、本科研研究のこれまでの成果を全体の歴史の流れのなかに作業仮説的に盛り込む。銀の含有量に関する研究論文と、貨幣製造人に関する研究論文を発表する。 (III)7月に渡英して、(1)これまで継続してきた大英博物館での銀の重量計測を継続する。(2)文献と史料の収集につとめる。(3)7月末の国際アングロ・サクソン=アングロ・ノルマン史学会バトルコンファランスと11月の国際中世史学会ハスキンズ・ソサイエティに参加して、情報交換を行い知見を深める。 (IV)今年度に出版される拙著『バイユーの綴織を読む』(山川出版)第IV部第10章「銀貨を求めて」で本研究の成果を開示する。 IV 中世ヨーロッパ史研究会を冬に開催して、今後の研究の方向を定めるとともに、翻訳を出版可能な状態にっもっていく。
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Research Products
(3 results)