2015 Fiscal Year Annual Research Report
中世ブリテン史における貨幣製造人の「世界」-C.973年~1279年-
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24520834
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 貨幣(銭貨)製造人 / 貨幣(銭貨)製造場 / ペニー貨 / 長い11世紀 / 権威 / 地域社会 / 交通 / 信用と信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
鶴島博和「ヨーロッパ形成期におけるイングランドと環海峡世界の「構造」と展開 」『史苑』75-2(2015), 5-108頁で、11世紀における貨幣製造人の活動の個別事例も含めて、当時の貨幣製造と流通の実態を、イングランドの権力と社会の構造のなかで解明した。とくに貨幣製造を担った製造人(moneyer)の社会的地位や組織、流動性、権力との関係を詳述し、イングランドとノルマンディを含む環海峡世界での彼らの活動を明らかにした。長い11世紀とよばれる970年頃から1135年頃に、貨幣が通貨として流通したのは、貨幣そのものの素材としての価値や権力と権威による流通強制だけではなく、それを製造する地域社会の良き人、つまり「ジェントリ」の信用が付加されることで可能であったことを主張した。この研究成果をうけて、2013年度から準備していた、前近代貨幣史研究会の活動を活発化し、世界の貨幣史研究の牽引車であるケンブリッジ大学フィッツウィリアム博物館のスタッフと研究連携を確立した。そして2016年度(平成28年度)の科学研究費基盤(A)「前近代ユーラシア西部における貨幣と流通のシステムの構造と展開」(代表鶴島博和)を申請し、採択された。本科研で行ってきた、貨幣流通を、権力と社会と交通の観点から、ヨーロッパだけではなく、ビザンツ、イスラーム、インド、中国、日本など、西部を中心にユーラシア全体を視野にいれた研究へと発展させていく。図書としては、鶴島博和(単著)『バイユーの綴織を読む』山川出版社、2015年8月を上梓し、貨幣製造人になりうる地域有力者の実態を描いた。さらに、ウェンディ・デェイヴィス編(鶴島博和監訳)『ヴァイキングからノルマン人』慶応大学出版会、2015年9月を上梓した。10年近く継続して刊行してきた、鶴島博和責任編集の「オックスフォードのブリテン諸島史」全11巻の翻訳と刊行を完了した。
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Research Products
(4 results)