2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520835
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山之内 克子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70267441)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 印刷メディア / 図像史料 / 銅版画 / ウィーン オーストリア |
Research Abstract |
初年度にあたる本年度は、ウィーンにおけるニュース銅版画、とりわけ本研究課題の中心テーマとなる銅版画製作者、ヒエロニムス・レッシェンコールについての基本的な史料・データ収集、またそれと並んで、銅版画制作過程により深くアプローチする目的で、エングレーヴィングやエッチング等、銅版画の基本的な技法の概要把握に努めた。史料収集については、2013年2月26日より3月19日にかけて、ウィーン国立図書館ならびにドイツ、ベルリン国立図書館に出張し、レッシェンコールの伝記的データおよび、当時の印刷メディアに公表されたニュース銅版画に関する広告記事を調査した。これらの広告は、すでに散逸した作品に関しても、その内容、サイズ、彩色の有無、価格等、基本的な情報を把握するためにきわめて有効な史料となりうるものである。 また、銅版画および版画全般の技法的知識については、目黒区美術館学芸員の降旗千賀子氏というアドバイザーを得ている。今後も実際の作品に即しつつ助言を得ていきたい。 なお、メディアとしての銅版画の社会文化史的位置価値、また、これを文化史の立場からどう評価するべきかという基本的問題提起については、2012年11月、雑誌『史潮』に論文を発表し、18世紀ドイツにおける新たな人的結合、文化的コミュニケーション、文化消費という、より広く一般的な議論と関連させながら詳しく論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この課題研究では、海外での史料調査に基づいて、啓蒙期ウィーンのニュース銅版画という、研究史においてほとんど注目されてこなかったテーマにアプローチすることを主たる目的として計画したが、初年度の今年度は、年度末にはなったが、ドイツ、オーストリアでの調査を順調にスタートさせることができた。 また、成果として発表した論文では、必ずしも芸術的・美学的価値をもたないニュース銅版画というものが、社会史・文化史の領域で研究対象としてどのような意義をもちうるのかについて、ミヒャエル・ノルトをはじめとする、ドイツ語圏における最新の研究史と関連させながら詳しく論じることで、本研究課題の重要性を充分にアピールしえたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度着手した海外での史料収集を、今後、より体系的・組織的に進めていきたい。とりわけ広告記事の調査・収集は膨大な作業となるので、次年度も継続して続ける必要があるが、一方で、ある程度データが蓄積された段階で、データベース化していくことを計画している。また、銅版画作品の現物については、本研究課題申請前の基礎調査において、主要作品の概要など、もっとも重要となる基本データをすでに整理しているが、これらについてのより詳しい分析作業、撮影、コピーライト申請などについては、主たる作品の所蔵先であるウィーン博物館の収蔵庫移転作業が終了する、2014年秋以降に行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も引き続き、ドイツ、オーストリアでの史料収集を進めるとともに、収集したデータをより扱いやすいかたちに整理していく作業にも着手したい。 また、成果発表としては、継続して当研究課題そのものに関する口頭発表、パブリケーションの機会を持てるよう努めるが、それと並行して、銅版画を含め、ドイツにおける印刷メディアの流通、受容を分析・考察する際に不可欠の基本的パラダイムとしての意味をもつミヒャエル・ノルトMichael Northの著作、Genuss und Grueck des Lebens. Kulturkonsum im Zeitalter der Aufklaerung の翻訳作業を完成させたい。
|
Research Products
(1 results)