2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520835
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
山之内 克子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70267441)
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Keywords | 啓蒙主義 / 画像研究 / 印刷文化 |
Research Abstract |
二年次に当たる本年の研究活動は、次の二つの領域に分けて行った。まず、本研究のメインテーマである「ニュース銅版画」へのアプローチのために、有効かつ普遍的・組織的な方法論と枠組みを確保する目的で、すでに研究スタート前から着目していたドイツにおける「文化消費」研究との接点を探ることに努めた。具体的には、この研究分野で著しい成果をあげている、ドイツ、グライフスヴァルト大学のミヒャエル・ノルト教授の著書、『人生の愉楽と幸福―ドイツ啓蒙主義と文化の消費』の翻訳を完成させたうえで、ノルト教授を所属研究機関に招聘し、講演会および、他大学や他の研究機関の研究者を交えたディスカッションの場を設けた。ここでは、日本及びアジアの消費文化との比較の可能性にまで議論が及び、今後、本研究をより学際的な形で展開させるための有益な知見を多く得た。 その一方で、昨年からの継続研究として、レッシェンコールに関する史料収集を現地ウィーンおよびベルリンで行った。とりわけドイツでは、専門家らとの研究打ち合わせの中で、レッシェンコール作品のほか、同時代に類似のニュース銅版画の大量生産地となったNeuruppinの市立博物館(2014年秋まで改装のため閉館中)に多くの画像資料が所蔵されているという情報も得た。これらの史料に関しては、さらに来年以降の調査の対象としていきたい。 また、銅版画制作の技術的側面に関しては、昨年から継続してアドバイスを依頼している目黒区美術館の降旗千賀子氏と並んで、みずから同時代のエッチング、エングレーヴィングを収集、研究している山領絵画修復工房の山領まり氏からも助言を得ることができた。工房では、キヨッソーネなど、極めて貴重な作品を実例として、版画のさまざまなテクニカルな特徴と、そこからいかにして社会史的、経済史的情報を読み取っていくかといった問題について、詳しい教示を受けることができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、レッシェンコールそのものに対する調査・分析よりも、その個別研究テーマの枠組みとなる「文化消費」研究へのアプローチに研究活動の重点を置くことになった。これは今後の研究にとって非常に有効な活動ではあったが、本来のテーマそのものに関する研究時間を、こちらの領域に割くことになったのは否めない。 また、ウィーン博物館の所蔵庫、Neuruppinの市立博物館など、移転・改装のため、重要な画像史料が閲覧できないという状況も、研究活動に多少ネガティブな影響を与えることになったが、一方で、文書館史料、広告史料などに関する収集、整理作業は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は「消費文化」という、本研究のベースの方法論となりうるような大きなテーマに取り組むことになったが、次年度以降は、ふたたびレッシェンコールとその作品、ならびに同時代のドイツ語圏で生産された類似の銅版画作品の分析に作業を集中させていきたい。次年度も引き続き、ドイツ、オーストリアでの原史料調査を行っていく予定であるが、レッシェンコール作品とともに、Neuruppinなどに所蔵されている類似作品も積極的に視野に入れ、比較の視点をもとりいれるように努めたい。
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Research Products
(2 results)